800億ユーロを金融支援するユーロ圏諸国とともに、IMFも300億ユーロのスタンドバイ取り極めによる金融支援を3年間にわたって行い、ギリシャ政府の経済調整プログラムを支援する。スタンドバイ取り極めは、通常、出資割当額(クォータ)の2倍であるが、ギリシャの場合には特別のケースとしてギリシャの出資割当額の32倍以上の金額に相当する金融支援がIMFから実施される。なお、このように、出資割当額の2倍を超えて、金融支援を受ける特別のケースでは、高めの金利が設定される。

金融支援プログラムでは、(i)財政の持続可能性を回復すること、(ii)対外競争力を高めること、そして(iii)金融部門の安定性のためにセーフガードを講ずることに焦点が当てられている。

(i)財政の持続可能性の回復については、13年までに具体的な方策によって財政健全化を図る。それによって、信認を強めて、市場アクセスを回復し、公的債務残高のGDP比を13年以降、低下経路へ導く。

(ii)対外競争力の回復については、名目賃金引き下げと費用削減と価格競争力向上のための構造改革を行い、投資・輸出主導の成長モデルにギリシャ経済を移行させる。また、経済における政府の透明性を改善し、その役割を小さくする。

(iii)金融部門の安定性のためのセーフガードについては、デフレに備えて、銀行の支払い能力問題に対処するセーフティーネットを拡大するために、金融安定化基金を設立する。ソブリンリスクの高まりから発生する流動性問題を緩和するために、既存の政府の銀行流動性支援ファシリティを拡大する。

これらは、IMFによるコンディショナリティと呼ばれる、金融支援のための条件である。ユーロ圏諸国は、IMFとともに金融支援を行うことによって、IMFによるコンディショナリティをギリシャ政府に課した。

さらに具体的にコンディショナリティを見ると、14年までにGDP比3%以下の財政赤字に縮小するという財政再建はギリシャ政府および国民にとって厳しいものとなっている。財政赤字縮小のために、政府支出が13年までにGDP比5.25%削減される。年金と賃金を3年間にわたって引き下げ、凍結し、そして、クリスマス、イースター、夏のボーナスを廃止する。政府収入は、付加価値税、奢侈税、タバコ税・酒税を引き上げることによって、13年までにGDP比4%を増やす。ギリシャ政府は、脱税者に対する徴税を強化する。これらの構造改革から得られる税収の増加と支出の削減は、徐々に増加してGDP比1.8%に達すると期待される。さらに、軍事費の削減も求められている。

このように徹底した財政再建策のためのプログラムがIMFからギリシャ政府に提示され、ユーロ圏諸国もこのコンディショナリティを評価し、IMFとともにギリシャ政府に金融支援を行うことを決めたことから、ギリシャ政府はこのプログラムを実施していかなければならない。その実施を成功させるためには、年金や賃金の引き下げ・凍結が含まれていることから、労働組合組織からの理解を得ることが必要である。労働組合組織がこのプログラムの実施に抵抗し続け、ギリシャ政府がそれを抑えきれないならば、IMFによるコンディショナリティを満たせず、ギリシャの財政危機の解決は遠のく。