人間関係は薄くなっていく一方
最近ある会社でこんなことが起きたそうです。若手の社員が上司から、「経費で落としていいから、銀座で取引先を接待してきなさい」と命じられ、「残業代は出るのでしょうか?」と聞き返した。会社のお金で飲み食いするうえに残業代だなんて、何を言っているのでしょうか。さらにいまの時代は、上司が部下を飲みに誘うだけでもパワハラになってしまうケースもある。こんな世の中では義理人情もへったくれもなく、人間関係は薄くなっていく一方です。
銀座の街を飲み歩いて美しい女性を口説く、もちろんそういった目的もあるにはあります。しかし最たるは、経営者や役員同士が銀座で出会って人間関係を深めながら大きな商談に発展してゆく。そこに作家たちも加わり、新しい文化が生まれていくことにあります。息子さんは少し遊びの幅が広すぎたようでしたが、大王製紙の井川高雄元会長などは、文壇とも非常につながりが濃く、日本の文化を担っていたお方でした。
企業も企業で、お金を貯め込まないでどんどん吐き出さなきゃいけない。利益が出れば外国に投資ばかりで、国民のことなんかひとつも考えていないところが増えてしまいました。
以前私が経営していた蕎麦屋に、現環境大臣の小泉進次郎さんが来店したことがあるんです。「進次郎さん、このままでは銀座の文化は廃れていくばかりです。企業の接待交際費を認める世の中に戻してください」と私は物申しました。すると彼は、「私が声をあげるのではなくあなたのような人がもっと声をあげていかないと変わりません」とおっしゃったのです。進次郎さんのファンとしては期待通りの声をいただけませんでした。国民の声を具現化するのが政治家の仕事ではないのでしょうか。