慰安婦支援団体に関する右翼のトンダ勘違い
しかし憂慮すべきは、正義連問題を受けていわゆる日本のネット右翼が「ほら見たことか。慰安婦問題なんて捏造だったのだ。慰安婦などいなかったのだ!」とやおら発奮していることである。いかにも韓国国内では正義連問題は連日大騒動である。しかし韓国内での報道の中で、正義連内部の不正疑惑を追及しようという動きは百花繚乱しているが、慰安婦の存在を否定したり、正義連が行ってきた日本軍糾弾の姿勢を否定したりする動きは全く存在していない。ここを日本の右派は全く勘違いしている。
正義連の方向性と、その不正会計疑惑は全く別個のものとして報道されている。正義連の中で内紛や不正疑惑があっても、それが慰安婦の存在を打ち消すことにはまったくなっていないのである。
無知をさらけ出す残念なコメンテーター
あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」で慰安婦をモチーフにした少女像が物議をかもしたことは記憶に新しい。何を以て芸術とするのかという問いには答えはないが、曰く右派界隈はこの少女像に対して「慰安婦は朝日新聞の捏造である」「慰安婦など存在しない」「慰安婦はただの売春婦だから何も問題はない」という論調が圧倒的大多数で、私がある番組で共演した自称エコノミストなど、近代史の勉強も全くしていない分際で「少女像を許容するとしても、その片手には札束が握られていないとおかしい!」などと言い放った。おかしいのは貴方の方だろう、と思わず突っ込みを入れてしまうほどの無知をさらけ出している始末なのである。
日本の右派における慰安婦問題への認識とはこの程度にすぎない(――そして彼らは従軍慰安婦という呼称を避け、“追軍売春婦”という言い方を好む)。しかし戦時に日本軍が強制力を以て本国や朝鮮、台湾出身の女性を慰安婦としてその用に供したことは事実で、それは揺るがすことのできない歴史的真実である。
問題を、順を追って整理してみよう。第2次大戦当時、大陸中国を含めて南方戦線に大きくその戦域を拡大させた日本軍は、当時の隠語「ピー屋」として、慰安婦を各地に帯同させた。もちろん、そこで働いていた女性たちには軍から給与が支払われている。しかし給与を支払ったから問題はない、という認識は偏向である。その給与の支払いは軍が発行する紙幣=軍票で行われたり、日本円にしても予め指定された貯金通帳に入金されたりしたのが一般的であった。