「日本を、取り戻す。」強いリーダー
迷走を繰り返した民主党から政権を奪還するため、2012年に安倍総理が掲げたキャッチコピーを覚えている人々は多いだろう。「日本を、取り戻す。」。野田佳彦内閣による唐突な「尖閣諸島国有化」に中国が反発し、周辺海域で中国海軍が挑発を繰り返したのは記憶に新しい。野田内閣にはなすすべがなく、国民の間には不安と不満が充満した。菅直人内閣時代の2010年9月に起きた尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件では、仙谷由人官房長官らが、逮捕された中国人船長の釈放を法務省側に働きかけるという「外交敗北」も経験した。そうした背景から「強いリーダーシップ」を期待されて誕生したのが安倍内閣だったのだ。
もちろん、現在も中国による脅威は続いている。むしろ、尖閣諸島周辺の接続水域で確認された中国公船は2019年に過去最多となった。だが、中国や北朝鮮の脅威をさほど不安に感じずにいられるのは、「領土・領空・領海を守る」と毅然とした態度で外交や防衛に取り組んできた安倍政権への信頼が根底にあるということだろう。
トランプと互角に渡り合えるすごさ
2017年1月にドナルド・トランプ大統領が誕生し、在日米軍駐留経費負担増や市場開放などが要求されるとメディアは騒いだが、G8でドイツのアンゲラ・メルケル首相に次ぐ古株となった安倍総理は粘り強い交渉でいずれも回避することに成功。核・ミサイル・拉致問題を抱える対北朝鮮外交についても助言し、「安倍総理がいなければ首脳会議は空中分解しかねない。その存在感は戦後最大と言っても過言ではない」(甘利明元経済再生相)とされている。かつては中曽根康弘総理がロナルド・レーガン米大統領との蜜月関係を築いたが、「何をするのか分からない交渉巧者のトランプ大統領を相手に世界のリーダーたちが困惑する中、安倍総理が互角に渡り合えるのはすごいこと」(外務省幹部)といえる。2013年の国家安全保障会議(NSC)設置など、わが国が怠ってきた有事に備えたシステムづくりを進めてきた点も忘れてはならない。
自主憲法制定を訴えていた中曽根氏は総理在任中、憲法改正を「封印」し、現在の消費税と似た「売上税」導入を果たすことはできなかったが、安倍総理は消費税率引き上げを2度断行し、憲法改正論議も総理自ら旗を振ってきている。残りの自民党総裁任期を考えれば、その実現は厳しくなってきているとはいえ、その「有言実行」力は他の比ではない。