早慶のウラその6「二文廃止でニートとなった40代フリーター」

最後は行きたい学部が廃止されたことによって人生が狂ってしまった人を紹介する。2006年度の入学試験を最後に学生の募集を停止、14年には廃止となった早稲田大学第二文学部(以下、二文)。夜間学部であること、23歳以上の社会人を受け入れていたこともあり、個性豊かな学生の宝庫であった。
10年度の進路状況によると、政治経済学部の就職率は80%(進学率は7%)。二文の就職率は55%(進学率は6%)。つまり、就職も進学もしない「その他」の人々が40%近くもいることになる。そんなゆるい雰囲気に憧れて入学を目指すも、浪人中に二文がなくなり、人生を壊してしまった男性がいる。40代、中卒フリーターの中村さん(仮名)だ。

悲しいな、こんな話をするの。またうつ病になっちまいそうだ。俺は中学を卒業してから、ずっとフリーターさ。昔から社会をなめていて、高校進学なんて才能のない凡人が選ぶ道だろって周囲を見下し、中卒になった。そんなだから誰も俺に寄り付かなくて、22歳のときにうつ病になった。

万年床に寝転がりながら取材を受ける、中卒フリーターの中村さん。(撮影=プレジデント編集部)

3年間引きこもった後、「このままじゃ人生やばい」と焦り、大検を取ってから25歳のときに初めて二文を受験したんだ。二文には変わった学生がたくさんいるみたいだし、受験科目も1科目と論文だけ。自分みたいな人間でも入れると思ったんだよ。でもさ、小中もろくに勉強していないから漢字が書けない。論文がひらがなだらけになっちゃって不合格。俺、地頭はいいから漢字さえ書ければ合格したはずなんだよ。

そこから何回か受験したんだけどさ、常にうつ気味でモヤモヤ、グダグダと数年間……。社会人入試だから、たとえば会社の上司の推薦状が必要なんだ。でもバイト先でも孤立していたから、父親にバイト先の上司の名前で推薦状を書いてもらっていた。父親は、俺が受験勉強なんてろくにしていないのを知っているから、「俺がどんな気持ちで書いているのか考えたことあるのか」って毎回嫌みを言われたな。

そのころは、滞納している携帯電話料金の督促の電話をするバイトをしていたんだけど、「おまえ、なに携帯止めてんだ、殺すぞオラァ!」って客にいつも怒鳴られて、またうつ。「おまえ、学歴低いだろ」って電話越しに罵られたこともあって、「私の家は代々、高学歴の家系です」とかつい言っちゃって。思い出すと死にたくなってくる。なんかもう、生きていたくない。

そして29歳のときだよ。俺はスカイプで知り合った上海在住の女の家に転がり込んでいたから、日本にいなかったんだ。ネットで二文の募集がその年で最後になるって知った。結構悩んだけど、30代にもなってまたイチから頑張るのがカッコ悪いとかブツブツ言ってたら、なんとなくラストチャンスが終わっちゃった。客観的に見ると、「死ねよ、コイツ」って思う。これが自分だって信じたくないよ。

二文さえ合格していれば、俺の人生は変わっていたはずだよ。というか、廃止になるのがもう少し遅ければ、俺も早稲田大卒だったかもしれない。タイミングが悪すぎた。なんで俺が日本にいないときになくなるんだ。その部分に関しては早稲田大学を恨んでもいいって思っている。

自分で言うけどさ、俺って持ち前の才能みたいなものがあるから人の役には立てるんだ。自分の金のこととか、もうどうでもいい。ボランティアでもいいから人の役に立って、俺も生まれてきてよかったんだなって思いながら死にたいよ。

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