カツラをかぶり続けるには、月々のメンテナンス、つまり自毛の調髪とカツラのクリーニングが欠かせない。カツラと自毛との調整にはメーカーの指導が必要なうえ、ほかの客の目には外した姿をさらしたくないのが人情。そうなれば割高なメーカーの理容室で調髪をせざるをえない。
さらにカツラは、1つだけというわけにはいかない。修理する場合にはスペアが必要になるから、最低2つは同時に購入する必要がある。しかもカツラは寿命が短い。長くても3年で買い替えの時期を迎える。総額を考えると、頭の上に数百万円の高級車を載せているようなことになりかねないのだ。
不透明な料金体系のため、ローン地獄に陥る人も少なくない。ある体験者が、こう証言する。
「購入時は、月々2万円の支払いで済むので、120万円のカツラを60回返済でローンを組んだ。ところがそのローンが残っているうちに、次々に新しいカツラを買う必要が生じ、結局は重複ローン状態になってしまった。カツラは当初、想定していたよりずっとコストがかかるんです」
他社の商品に変更したくても、前のローンが残っているので、なかなか変えることができず悩んでいる人も少なくない。国民生活センターによると、育毛・増毛システムやカツラの契約に関するトラブルは2008年度で1275件寄せられ、金額も100万~500万円が192件、500万円を超えるものも数件ある。育毛で3000万円という高額のものまであった。
カツラ業界は、一度つけた者はカツラを外した姿では人前に出られないという弱みにつけ込むコンプレックス商法でもあるのだ。男の魅力は髪のあるないではなく、自信のあるなし、と言いきりたいものだが……。