自動車業界がコロナショックをどう好転させるか
もとより自動車業界は、日本の若者の「車離れ」や、それにより発展しつつあるカーシェアという変革期だった。車そのものも、電気自動車、自動運転システムへの移行という大きな分水嶺を迎えている。自動車業界がコロナショックをどう好転させるかは日本経済の行く末を大きく左右することになるだろう。
食品業界は学校給食や外食向けのものに落ち込みがあるものの、在宅ワークや休校措置の影響で、家庭で食べる冷凍食品などの需要は高まっているという。WTOが食糧危機の懸念を示すなど、今後、輸入に頼っている原材料の調達に影響が出る可能性は否定できないが、扱っている品物が品物なだけに、とにかくコロナ患者を出さないことが悩みの種になっていると話す関係者もいる。
「もし感染者を出せば、企業名を公表しなければならない。工場などの生産拠点で罹患者を出せば操業を止めなければならないのはもちろんですが、コロナと商品が結びついてしまうと、そのイメージを払拭するのは大変。なんとしてもコロナにかからないよう、20年2月の段階から旅行などを文字通り“自粛”していました」(食品メーカー社員)
インバウンドや中国との関係の直接は左右されない業界にも余波は及んでいる。20年4月3日に帝国データバンクが公表したアンケート調査によれば、全業種の8割以上が「マイナスの影響あり」と見込んでおり、そのうちの5割近くが「すでにマイナスの影響が出ている」と回答している。調査期間は20年3月17~31日と緊急事態宣言前だが、それでもこれだけの数字である。
住宅設備業界をはじめ、関連企業でも「新型コロナの悪影響は避けられない」とする声が上がっている。建設業界を騒がせたのは「トイレ不足」。ウォシュレットなどトイレを構成する様々な部品の多くが中国で生産されており、中国での生産がコロナの影響を受け始めた20年2月中旬の段階から納品の遅れが発生。当初、トイレが設置されていないと建築基準法上の「完了検査」を受けられなかったため、業界はパニックを起こしかけたという。
住宅周りではほかにも、水回りやシロアリなどの定期チェックなども後回しにされるケースが出始めている。「不要不急ではないし、他人を自宅に上げるのは今はリスクだから」というのが主な理由だ。
また、テレワークなどの導入で、かねて不要ではないかと指摘されながら改革に至らなかった業種・部署が“効率化”の名のもとに削減される可能性も高まっている。製薬業界のMR(医薬情報担当者)がやり玉に挙がっているという指摘もあるが、そもそも企業の営業職は00年からの20年間で100万人以上、減少したといわれる。「直接足を運び、顔を合わせて自社製品を売り込む」形の営業職は、どの業界であれ、この間に削減の方向に進むかもしれない。