JASRACはなぜ毎回勝てるのか
判決の話に戻ると、訴訟の争点は著作権法の2つの条文、演奏権について定めた著作権法22条と著作権法の目的を定めた1条の解釈をめぐる争いだった。
1.音楽教室での演奏に演奏権が及ぶのか?
著作権法22条は、公衆に聞かせるための演奏には演奏権が働くとしている。その解釈をめぐる裁判でJASRACはこれまで勝訴を積み重ねてきた。図表1および以下の解説のとおり、今回も地裁はそうした判決を踏襲した。
音楽著作物の利用主体はヤマハのような音楽教室事業者
1.1 音楽教室における演奏は「公衆」に対するものか?
地裁はまず「著作物の利用主体の判断基準」を示した。
クラブキャッツアイ事件最高裁判決とは、カラオケスナックでの客の歌唱もカラオケ店主による演奏であるとした1988年の判決である。最高裁は、①客の歌唱を管理し、②営業上の利益増大を意図した――ことを条件に店主に責任を負わせた。その後、カラオケ法理とよばれ、インターネット関連の新規サービスを提供する事業者に広く適用されるようになった。
最高裁がカラオケ法理を再検討したのが、2011年のロクラクII事件判決。知財高裁は事業者の責任を認めなかったため、カラオケ法理の呪縛から解かれる日も近いのではとの期待を抱かせたが、最高裁はこれを覆し、一審と同様に事業者の違法性を認めた。
今回のJASRAC裁判で地裁は、演奏の実現に枢要な行為である課題曲の選定は、音楽教室事業者である原告らの作成したレパートリー集の中から選定されることから、原告らの管理・支配が及んでいるということができるとした。