感染者が正しくマスクを着用しないと効果はない

マスクは感染者の飛沫(せきやくしゃみで飛び散るしぶき)を防ぐことができる。1万分の1ミリほどの小さなウイルスはマスクの網目から多少は飛び出すが、それでもウイルスを含んだ飛沫の大半を封じ込めることが可能だ。

新型コロナウイルスは飛沫によって人から人へと感染を広げていく。空気中に長時間浮遊しながら人に感染していく飛沫核感染(空気感染)とは違う。確かに飛沫感染するウイルスや細菌などの病原体にマスクは役立つ。

ただし、効果が大きいのは感染者が正しく着用した場合に限られる。

たとえば感染者の飛沫がマスクの内側に溜まっているのにもかかわらず、マスクを外すときにその内側を触れば、手に多くのウイルスが付着する。内側に触れなかったとしても、マスクの外側にも網目をかいくぐったウイルスが付着している。

そんなマスクに触れた手でドアノブを触り、電車の吊革をつかむとどうなるのか。ドアノブや吊革にウイルスが付着し、そのウイルスが他人の手に付く。その人が何気なく鼻や口を擦ると、今度はウイルスに感染する。これが接触感染である。

マスクは口と鼻をきちんと覆う必要がある。口だけ覆って鼻を出したままという人も多く見かけるが、これではマスクは本来の効果を発揮できない。

マスクは「付けないよりは付けたほうがまし」という程度

多くの人は、感染者の飛沫を浴びて感染するリスクを避けるためにマスクを着用しているのだろう。ウイルスの付着した手を無意識に口や鼻に持っていってもマスクをしていれば、感染は防げるかもしれない。しかしこれも外すときに感染者の飛沫が付いている可能性のあるマスクの外側などに触れれば、結局は接触感染してしまう。

マスクは「付けないよりは付けたほうがまし」という程度だ。目に見えない病原体に対し、正しく脱着しないとマスクの効果は薄くなる。これは医療関係者が身に着ける防護服にもいえ、素人がいくら防護服で身を包んでも役には立たない。

私たちにとって一番いいのは、手をよく洗うことである。外出先から帰ったら、まず手を洗う。手の荒れが気になるのなら、石鹸やアルコール液を使わずに水だけで洗ってもいい。それでも付着したウイルスをある程度は流せる。