家計の実情に即したすぐれた仕組みということもできるが、ここで注目したいのは学歴による格差である。放物線の上昇角度が大卒・院卒と中卒や高卒とではあまりにも違うのだ。
社会人としての出発点に近い20代のうちは、学歴による格差はほとんど見られない。しかし30代後半に入ると大卒・院卒が急角度で上昇を始め、ピークである50歳時点では高卒との間で300万円近い大差がつく。
つまり、基本的には生活給の色彩が濃いというものの、本人の学歴によって、子どものために用意できる教育費や住宅予算に大きな差ができてしまうということだ。
一流大学に子どもを進ませるためには、当人の素質に加えて相応の教育費負担が必要とされる。事実、東大生の親の年収調査によると、約半数が950万円以上の高所得層となっている(図参照)。
ということは、学歴による年収格差は子ども世代においても学歴格差を招き、ゆくゆくは年収格差を固定する方向に働きかねない。恐ろしいことに、社会人になる時点でこのことを理解しているかどうかが、次の世代を含めた将来の年収格差につながってしまう、ということである。
ここまでは正社員間の格差だが、契約社員やパートの場合は、それ以前に年功型の賃金カーブなど期待できない。
正社員の平均年収は全上場企業で666万円、全企業ベースでは523万円であるのに対し、契約・派遣社員は270万円(全企業)、パートは113万円(同)と大きな開きがある。
以上から導き出せる教訓は「できるだけ大きな企業へ正社員として就職する」、そして「高卒時点ではなく、大学や大学院を出てから入社試験にチャレンジする」ということだ。
常識的で平凡だが、非常に重い意味を持つ教訓である。