ズレを修正するための3つの視点
それでは、“ズレ”のない就職氷河期世代への支援策はどう在るべきか、具体的には以下のような点がポイントになると考えられる。
第1に、「企業に通い勤めるだけが社会的な自立ではない」ことである。いまや働き方は多様化し、特定の企業に属し、例えば正社員として通い勤める以外でも、社会とつながり、生活を送ることができる可能性は以前よりも高まっている。
不安定な就労が長期化する人が多く、また中高年齢のひきこもりが深刻化し、就職氷河期世代の多くを含む40代では、約27万人いると推計される状況下(図表4)、そのような形であれば自立できる可能性を有する人も少なくないのではないか。
また、そうした形での社会的自立は、デジタルツールやサービスを個人で使うことができるようになった面も大きく、総務省「通信利用動向調査(2016年)」では、30代~40代のパソコンやスマートフォンの利用率がそれぞれ70%台~90%弱と高いことも示されている。同世代と親和性の高いデジタルスキル・ツールを活用した自立を選択肢として考えるのも一案ではないだろうか。
第2に、「支援の手段や担い手を変える」ことである。現行の政策対応が申請しないと利用できない「申請主義」の性格が強い点を見直すとともに、当事者との接点として、SNSなど時代の潮流に合致した手段で能動的なアクションを積極化する必要がある。
また、担い手としては、政府案でもひきこもり経験者やNPOの活用が挙げられているが、そこに、不遇の世代として共に厳しい就職氷河期を経験し、その痛みがわかる同じ世代や、地域や家庭の実情に通じたベテラン世代も加えたうえで、より多くの役割を担ってもらえば、当事者にも心を開いてもらうことができ、寄り添える面が多いのではないだろうか。あわせて、そうした人や組織の声が、支援の中身に確実に反映されるような仕組みづくりが欠かせない。
第3に、「並行して非正規雇用の処遇を改善する」ことである。国立社会保障・人口問題研究所「就職氷河期世代の支援ニーズに関するグループ・インタビュー調査報告書」では、実際の同世代における非正規雇用者から、「正規雇用への転換」よりも「非正規雇用の待遇改善」を求める声が比較的多いと指摘されている。これは、正規雇用への就労支援と並行して非正規雇用における働く環境の改善を進めることが重要であることを示している。