賃金の上昇と労働生産性の関係
以上のように、賃金上昇率の低下の背景には、金融危機後の景気循環的な要因に加え、産業構造の変化、雇用のミスマッチ、高齢化などの構造的な要因が挙げられます。
様々な賃金上昇率の低下の構造的な要因をまとめると、労働生産性の問題に行きつきます。労働生産性は、労働者の能力向上や機械設備の性能上昇によって向上します。労働生産性が向上すれば、企業負担を増やすことなく、賃金を上げることができます。つまり、賃金の持続的な上昇には、労働生産性の向上が不可欠といえます。
労働生産性を向上させるためには、産業構造の変化に対して、人々の労働市場での移動のスピードを速める必要があります。個人が新たなスキル習得のために自力で教育や訓練を受けることには困難が伴いますので、そうした取り組みを支援していく、各国・各地域での経済政策が求められます。
日本総合研究所 研究員
慶應義塾大学経済学部卒業。日本総合研究所に入社後、日本・米国・欧州のマクロ経済分析を担当。公益社団法人日本経済研究センターへの出向を経て、日本総合研究所に帰任。米国経済の現状分析と将来展望に関するレポートを毎月発行し、新聞・雑誌などで米国の経済情勢に関する解説を行っている。