キャッシュレスはすごいやつしか使えないイメージ

【原田】よく「五感マーケティング」が大事、なんて言われるけど、「音」のマーケティングは非常に重要になってきているね。若者たちにとってクールな音とは何か、ということをキャッシュレス決済サイドの企業はきちんと研究しないと、音を理由にしてキャッシュレス化が進まない、なんてことが起こるかもしれない。

ちなみに、「意識高い系」という、意識高い行動をしている若者を他の若者が揶揄する言葉があるけど、「電子マネーとか使ってる私、意識高い」と思っている人がダサい、みたいなことはあったりするのかな?

【牧之段】それはないですね。僕は逆にアーリーアダプターの人たちがSNS上で「PayPayのキャンペーンで○○をお得に買えた!」という風な、キャッシュレスサービスを使いこなしているような投稿をしているのを見ると、「自分はスマートに使いこなせないのにすごいな」と気後れしてしまいます。

むしろ、キャッシュレスはすごいやつしか使えないイメージです。そういう意味でも、周りのみんなが使ってるかどうかって大事ですよ。誰もQRコード決済を使ってないのに、自分だけ使うのははばかられます。

【小川】あとはお店の雰囲気としても電子マネーを推してくれていると、使いやすくなると思います。ファミマは「PayPay」を店内放送や貼り紙で推しているので、そういう空間だったら使っても良い気持ちになります。そこまで店内でフィーチャーされていたら、恥ずかしさはなくなりますね。

【原田】単に便利かどうかだけじゃなく、「自分が使っても良い雰囲気があるかどうか」が今の若者にとっては重要になっているんだね。SNSの普及によって多くの友達とつながり、周りの友達の動向や目をかなり気にするようになっている今の若者たちは、キャッシュレスサービスを使うことによって、周りからどう見られるか、ってことをかなり意識するようになっているんだね。今の若者気質が表れてるなあ。(後編に続く

原田曜平(はらだ・ようへい)
サイバーエージェント次世代生活研究所 所長
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年12月よりサイバーエージェント次世代生活研究所・所長。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『さとり世代』『ヤンキー経済』『これからの中国の話をしよう』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」、日本テレビ「バンキシャ」レギュラーとして出演中。
(構成=稲田豊史、撮影=プレジデントオンライン編集部)
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