「再び増税を延期するなら解散するしかない」
麻生氏は衆院を解散して7月に予定される参院選との同日選を行うべきだと水を向けたのだ。安倍氏は2014年にも消費税の増税を延期している。その時は衆院を解散して国民に信を問うた。再び増税を延期するなら解散するしかない、という理屈だ。
麻生氏の提案は安倍氏にとって、さほど意外なものではなかった。実は安倍氏も同日選を行おうと考えていた時期があったのだ。しかし4月中旬に最大震度7を記録した熊本地震が起き、復旧・復興を優先させるため解散を断念していた。
4者会談で菅氏は、連立のパートナー・公明党が、同日選に強硬に反対していることを理由に衆院解散に慎重論を述べた。会談は午後10時に終わったが、政権のトップ4人が増税と解散という最重要政治判断を巡り真っ二つに割れた「歴史的」な会談となった。
「分刻みで動く首相が食事に3時間以上」の異例
話には続きがある。この会談の後、安倍氏は麻生氏の外堀を埋めるため、山口那津男公明党代表に連絡を取り、同日選は行わないことを約束。その上で30日夜、永田町のザ・キャピトルホテル東急のレストランに麻生氏を招き、最終的に「増税見送り、衆院解散も見送り」を伝えた。この時はさすがに麻生氏も抵抗はせずに安倍氏の考えを受け入れた。
2人は6時半から食事を始め夜9時50分まで飲み続けた。分刻みで動く首相が食事に3時間以上費やすのは異例のこと。基本方針を決めた後、2人は関係修復と参院選勝利のために杯を交わしていたのだ。
16年と19年、状況は酷似している
既にお気づきの人も多いことだろう。2016年の5月と今は共通点が多い。7月に参院選が控えている。消費税増税の延期説がくすぶっている。そして衆院解散風が吹き、衆参同日選の可能性が取り沙汰されている。現在の政治情勢については「消費増税凍結を発言させた安倍首相の狙い」で整理してあるのでそちらを参考にしていただきたい。
3年前と酷似した状況の中で4月30日に2人は会談した。「消費税」や「衆院解散」が話題に出たと考えるのが自然だろう。新聞、テレビの政治部記者たちは会談の中身を探ろうと奔走している。