人口40億人の「BOP市場」を狙え

この期に及んで日本にしがみついているのは、政権交代もしたし、政府が対策を打っているのだから、いずれ景気がよくなるのではというぼんやりした期待感があるからなのだろう。しかし国民から搾り上げた税金や将来から前借りした金でいくら景気対策をしても、タコが自分の足を食べているようなもので、それで日本経済が立ち直ることなどありえない。ましてや将来への展望が開けるわけがない。

世界の市場で勝負するなら、スイスのような考え方をしなければいけない。トラブルに遭うと、すぐに本国に泣きついて帰ってくるようでは世界化などほど遠い。

世界でまんべんなく強い日本企業といえば、自動車、エレクトロニクス、工作機械、部品関連など第二次産業の一部に限られる。農業などの第一次産業、サービス業などの第三次産業は、世界では手も足も出ない。今から20年ほど前には日本のホテルや百貨店、ゼネコンなどが威勢よく世界に出ていったが、今やほとんどが撤収、尻尾を巻いて帰ってきている。

イトーヨーカ堂が中国で頑張っているといっても上海と成都の二都市だけ。統合を予定しているキリンとサントリーにしても、中国やアジアの一部で強さを発揮しているにすぎない。

本当のグローバル企業というのは、例外なくどこの国にも入り込んで市場を切り開くものだ。

たとえば、アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンは参入の方程式が決まっていて、母親や看護師相手のコンシューマ商品、綿棒やベビーパウダーやローションなどから入っていく。そして幾度かフェーズを重ね、最終的には高級な医薬品や医療機器を売り込むのだ。

同社はこの方程式で多くの国で成功してきた。1日2ドル未満の所得しかない貧困層が人口の約80%を占めるインドでは、綿棒を1本ずつ、バンドエイドを1枚ずつ売っている。

地球上には年収3000ドル以下で暮らしている人々が約40億人いる。これが「ボトム・オブ・ザ・ピラミッド」(BOP、ピラミッドの底辺)と呼ばれる層で、新興国に入り込むにはBOP市場の掘り起こしが欠かせない。コンシューマ商品を小分けにして売るのはBOPビジネスの基本なのだ。