711校の8割以上が「普通校」以下

さらに井上氏は、各日本語学校のN1とN2合格者と進学者の比率を調べた。比率が高ければ、日本語能力を身につけた留学生が進学していることになる。結果は、進学者全員がN2以上に合格し、井上氏が「優良校」とみなす学校が11.2%、70%以上が合格という「普通校」が16.1%だった。一方、N2以上の合格者の比率が4割以下の「不良校」が57.2%にも上っていた。

日本語学校の数は2018年8月時点で711校まで増えていて、文科省の資料に載っていない学校も252校に上る。93校の新設校に加え、こうした未登録校も、偽装留学生の受け入れによって成り立っている疑いが強い。

一方、井上氏が「優良校」か「普通校」とみなす日本語学校の数は、文科省のデータを提出した459校のうち100校に過ぎない。そのなかにも偽装留学生を一部受け入れている学校はあるはずだが、この100校を除けば、711校の大半は「悪質」とみなすことができる。つまり、少なくとも8割以上の日本語学校は、偽装留学生の受け入れで経営が成り立っている疑いが強い。

日本語能力試験合格者に「国籍別」がない理由

留学生が日本語レベルを証明する試験には、他にも独立行政法人「日本学生支援機構」(JASSO)が実施する「日本留学試験」などがある。日本語能力試験を受けず、日本留学試験のみの成績で進学する留学生もいる。それでも井上氏の研究は、日本語学校の実態を知るうえで貴重なものである。

日本語能力試験は日本国内のみならず、世界各国で受験できる。N1合格者は国内受験者だけで2012年から4000人以上増え、17年には2万3378人に達した。N2に至っては3万4570人と、5年間で2倍近くになった。

しかし、同試験を統括する独立行政法人「国際交流基金」と公益財団法人「日本国際教育支援協会」は、国籍別の合格者を公表していない。井上氏が集計した文科省の資料も同様、公表しているのは日本語学校別の合格者までで、国籍には触れていない。

国籍別に公表すれば、合格者が中国や韓国など漢字圏の出身者に偏っていることが証明される。そうなれば、ベトナムなどアジア新興国の「留学ブーム」によってやって来た外国人たちが、実際には出稼ぎ労働者に過ぎず、しかも日本語学校の教育が全く機能していないことも明らかになってしまう。

それは日本語学校業界、そして日本語教育を推進する文科省や外務省、また「留学生30万人計画」を主導する安倍政権にとっても都合が悪いのだ。