個人的には、ほかにも打つべき手はあると思う。特に、離婚後に片方の親だけが親権を持つという、日本独特の仕組みについて、疑問に感じている。虐待親が単独親権という独裁的な権利を持つと、第三者が子供を救うことが難しくなるからだ。

そのうえ、単独親権を持つ親が再婚・養子縁組をすると、血のつながらない親へ簡単に“空き”になっていた2つ目の親権が与えられる。その新たな親が虐待に加担するのは、現場を見る私からすればまさに「児童虐待の方程式」だ。

夫婦間はこじれてダメになったとしても、実の子供は子供。子供が血のつながった両方の親と関係を続ければ、片方の親が他方の親の虐待を防げるかもしれない。しかし日本では、離婚で別居する親と子の縁を切り、法的な権利も切ってしまう。海外の探偵と情報交換する際など、そんな日本の現状を説明すると、「なぜそんな仕組みなんだ」と聞かれる。でも私は答えられないし、なぜだかわからない。

諸外国のように、離婚後も、血のつながった2人の親が共同親権を持てば、虐待のリスクは減るだろう。私たち探偵も、共同親権者からの依頼というお墨付きがあれば、虐待阻止のために動きやすくなる。これ以上悲劇を繰り返さないために、離婚後の親権制度の早急な改革を望みたい。

(答えていただいた人=T.I.U.総合探偵社代表 阿部泰尚 写真=iStock.com)
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