「平等に利益が生まれる」とは限らない

税法上もマイホームを購入した場合には、不動産取得税や登録免許税が安かったり、有名な住宅ローン控除はもちろん、売却したときの利益から3000万円控除される制度があったりと、不動産投資を通じて売買するのに比べてずっと手厚い(著者からすると、それでもまだ不足だと感じているが)。

他方、不動産投資は「事業」。「事業」である以上、知識のある商人同士で行われる取引のため、自由が尊重される世界で行われる。

そもそも取引は、基本的にはお互いに利益が生まれるときに初めて成立するわけだが、「平等に利益が生まれる」とは限らない。片方に大きな利益をもたらすように誘導したり、実態に見合わない商品やサービスを提供されたりすることもあるだろう。

そして「事業」の場合、そのやりとりは当人たちに任される。その分、よりスピーディ且つ簡単な形で取引できるという恩恵が得られる寸法だ。

だまされたら、奈落の底へと落とされる

だからこそ、不動産投資を行うなら、それなりの知識や戦略、技術が必要とされて当然だ。それらが無いために、相手から言われるがまま価格に見合わない物件を買わされたとしても、それはやられた方が悪い、とされる。

だからこそ、一度不動産投資家になることを決めたのであれば、自ら学び、その力を磨くことを厭わず、そして何よりだまされてはいけない。

相手は不動産業者だろうと、銀行員だろうと関係ない。

弱者を見つければ、尻の毛までむしりとろうとするこれからの時代、不動産投資でだまされたら、あなたの人生はそこで奈落の底へと落とされる。そのことをぜひ自覚して欲しい。

山田寛英(やまだ・ひろひで)
公認会計士・税理士
1982年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。アーク監査法人(現・明治アーク監査法人)に入所。不動産会社や証券会社を中心とした会計監査実務を経て、税理士法人・東京シティ税理士事務所にて個人向け相続対策・申告実務に従事。2015年、相続税・不動産に特化したパイロット会計事務所を設立。不動産を中心とした相続対策・事業承継を専門とする。著書に『不動産屋にだまされるな』(中公新書ラクレ)などがある。
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