「仕送りやめたら娘は水商売の世界に入るかもしれない」

問題は、母親が娘に仕送りをしていたことが息子の嫁にばれたことだ。母親は、夫に先立たれてから「経済的に不安だし、寂しい」という理由で息子夫婦と同居するようになり、高収入の息子から小遣いをもらっていた。ところが、息子から小遣いをもらいながら、娘に仕送りをしていたことが息子夫婦に発覚し、嫁は「そんなの筋が通らない。おかしい」と激怒した。

息子は「母さんにあげたお金だから、好きなように使えばいい」と取りなそうとしたが、それがかえって火に油を注ぐことになった。嫁は「お義母さんへの小遣いをやめるべき。お義母さんには仕送りをするだけの余裕があるのだから、小遣いをあげる必要はない。これからも小遣いをあげるのなら、同居をやめる」と言い出したのだ。

そのため、母親は息子の嫁と冷戦状態になり、口もきかなくなった。息子の嫁と顔を合わせるたびにイライラするうえ、同居を解消されたらどうしようという不安も強くなったので、私の外来を受診したという。

話を聞いて、娘への仕送りをやめれば、息子の嫁との間に波風を立てずにすむと思ったので、そう伝えた。すると、「だって、仕送りをやめたら、娘は借金を返すために水商売の世界に入るかもしれない。借金を返せなかったら、カード破産するかもしれない。どちらにしても家の恥」という答えが返ってきた。

そこで、「娘さんが借金を作ったのは、買い物依存のせいでしょう。娘さんに仕送りを続けることが、むしろ買い物依存から抜け出すのを妨げているんですよ」と説明したが、この母親は納得しなかった。そして、2度と来院しなかった。

「わが子のため」と思ってお金を渡し、子供をダメにする

ここで紹介した母親は2人とも、典型的なイネイブラーである。わが子のためと思ってお金を渡し続けているが、それがむしろギャンブル依存や買い物依存を助長していることに、気づいていない。

こういう親は、まず自分がイネイブラーになっているという自覚を持つことが必要だ。そのうえで、いい年をした子供への経済的援助は即刻やめるべきである。

(写真=時事通信フォト)
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