とりあえず様子を見よう、が一番危険
「先生、うちの社員がうつ病で長期間休んでいます。どうしたらいいでしょう」
こんな相談を受けることがある。長時間労働によるうつ病といった社員のメンタルヘルス不調は、社会問題として周知されるようになった。ストレスチェックといった事前の予防も積極的に実施されるようになった。だが現実的なところとして、やはり社員がうつ病になってしまうことはある。
うつ病をはじめとした精神的な疾病について、会社の対応が後手になる傾向がある。精神的な疾病は、個人のプライバシーに直結するところだ。ついつい「とりあえず様子を見ておこう」と対応を先延ばしにすることで、何もしないまま時間ばかりが経過してしまう。
うつ病の治療をしている社員にとっても、「自分はどうなるのだろう」という不安ばかりが募ってしまうことにもなる。社員が治療に専念できるように、社長としても、対応を事前に取り決めておくことが必要だ。事後的に「こういう扱いにするから」としてしまうと、社員とのトラブルになることは間違いない。
どんなトラブルが起きるのか
うつ病の原因はさまざまだ。ストレスの原因が業務の場合もあれば、家庭の問題の場合もある。あるいは双方重ねてというときもあるだろう。このようにうつ病の原因を特定することは容易ではない。一般的には、申請をしても労災認定されないことが多い。精神障害の労災認定率は、約4割といわれている。それでは、労災認定されていない社員のうつ病に関して、どういう点がトラブルになるのかざっくり見ていこう。
まずは、受診命令だ。体調がすぐれないように見える社員に「とりあえず病院で診察してもらって」と言えるかということだ。これは、就業規則に明示されていればできる。明示されていない場合であっても、必要性があれば、できるだろう。症状が悪化する前に、早めに診察を勧めるべきだ。
社員がうつ病になって治療を要する場合には、会社が休職命令を出して休職ということになる。休職期間中の賃金は、一般的には無給と定めているところが多い。社員としては、加入する健康保険から傷病手当金を受給することができる。ここに火種が一つある。