独学なら、知っていることは飛ばせます。そして、必要なことをいくらでも深く勉強できます。例えば、仕事で英語を使いたいとき、一般的な英会話を学んでも、ほとんど意味がありません。どのような仕事をやっているかによって、必要な英語は違うからです。ビジネスに必要な英語は、英会話学校では学べません。これを学ぶには、独学で勉強するしか方法がないのです。

野口悠紀雄(著)『「超」独学法 AI時代の新しい働き方へ』(KADOKAWA)

独学は、事情が変化したときに対処できる柔軟性もあります。学校に通っている場合には、一度選択したコースを変更するのは難しいでしょうが、独学なら、知りたいことを柔軟に変更できます。やり直しもできます。

独学のもう1つの大きな長所は、楽しいことです。そもそも、われわれはなぜ勉強するのでしょうか? 能力を高めるために必要だからです。そして、勉強すれば、リターンがあるからです。ただし、勉強する理由は、それだけではありません。一番大きな理由は、勉強することが楽しいからです。

人間は、生まれたときには、ごく限定的な能力しか持っていません。人間の能力のほとんどは、後天的な勉強(学習)によって獲得します。こうした意味で、人間はきわめて特殊な動物なのです。

人間の本質は、勉強にあります。勉強こそ、人間の人間たる所以であり、勉強することは本能的に楽しいのです。「勉強したい」という本能に導かれて行う独学は、大変楽しいもので、おそらく、どんなことよりも楽しいでしょう。

飛躍的に改善された独学のための条件

インターネットが発達したことによって、独学のための条件は飛躍的に改善されました。検索サービスを利用して、知りたい知識を得ることができます。英語などを勉強するための教材がウェブで簡単に手に入ります。大学と同じレベルの独学コースも提供されています。さらには、自分が勉強した成果をウェブで発表したりすることもできます。

しかも、スマートフォンが発達したので、こうしたことがどこでも簡単にできるようになりました。満員電車の中でも可能です。

ITの発展によって、「知識のプル」はずっと容易になったのです。そして、技術が進歩すると、独学のための条件はさらに改善されるでしょう。