単純作業はもちろん、管理や経営、記事の執筆と行った知的労働の分野にまで、AIの進出が予見されている。そんな中、早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏は、新著『「超」独学法 AI時代の働き方へ』(角川新書)で、「新しい『勉強の時代』が到来している」と主張する。コンピュータやロボットに仕事を奪われないために、人間は「勉強」を通じて何を身につけるべきなのか――。
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驚異的なスピードで進化するAI

人間の神経細胞(ニューロン)の働きをまねた仕組み(ニューラル・ネットワーク)をコンピュータに作り、大量のデータで学習させるディープラーニングと呼ばれる機械学習の技術によって、AIの進歩が加速しています。これまで人間がやってきたことを、コンピュータがより効率的に遂行できるようになりました。

従来、コンピュータやロボットが代替するのは単純労働が中心と思われていました。しかし、最近では、コンピュータが知的労働の分野にも進出しています。翻訳ができる。データを与えられて記事を書くことができる。作曲ができる。自然法則の発見もできる。ビジネスにおいても、ビッグデータを活用することにより、個人に合わせてアドバイスができるようになっています。

管理者や経営者の仕事もAI化される?

また、ブロックチェーンの技術も、働き方に大きな影響を与えます。ブロックチェーンとは、仮想通貨の基礎になっている技術です。コンピュータの集まりによって情報を記録・管理します。管理者や経営者の仕事は、ブロックチェーンの技術を用いる「スマートコントラクト」というプログラムに置き換えて実行することが可能です。ビットコインが管理者なしに運営されているように、いずれは管理者や経営者がいない事業体が登場すると予測されます。

人間は、AIとブロックチェーンによって仕事を奪われることになります。専門家や経営者の仕事も安泰ではありません。こうしたことはこれまでもありました。例えば産業革命がそうです。しかし、今回はもっと影響が大きいでしょう。