「コンクリートから人へ」を実装しよう
【北田】だから野党はその点を攻めればいいんですよ。わたしもリベラル懇話会で、当時の民主党の人たちに「野党は「アベノミクス」の良い部分(金融緩和と財政出動)は継続して、お金の循環のさせ方を変えます、という方向でいけばいいじゃないですか。そちらのほうが票につながると思います」とご説明したんですけど、まったく同意してもらえなかった経験があります。たとえば、いま「消費税を下げます」と言えば、劇的に支持が集まると思うんですけど。
昨年(2017年)から続くモリカケ問題や南スーダンの自衛隊の日報隠し問題など、スキャンダルが立て続けに起こり安倍政権の支持率も不安定になってきています(2018年3月27日時点では、森友学園問題が財務省の公文書改ざん問題にまで発展している)。もちろん、こうした政権の横暴は今後も厳しく追及していくべきなのですが、同時に野党のほうも景気対策に無頓着なこれまでの姿勢を改めて、きちんとした経済政策を出していかないと、(たとえスキャンダルで安倍政権が倒れたとしても)いつまでたっても有権者の支持を得ることができないで、結局政権交代は遠い夢のままになってしまうんじゃないかと危惧しています。「経済か、民主主義か」という風に相手の土俵に乗っかって戦うのではなくて、先ほどのブレイディさんの言葉で言えば「経済に(も)デモクラシーを」求めていかなくてはならない。
【ブレイディ】わたしも野党はいまこそ「左派本流のやり方で景気対策をやれば、もっと庶民にいきわたるようにやれる」と有権者に訴えるべきだと思います。必要なのはまっとうな左派の反緊縮なんですよ。「アベノミクス」に対抗するなら、欧州の新左派にならって、素直に左派からの「ニューディール」を訴えていけばいい。
左派こそ力強く反緊縮を訴えていくべき
【松尾】僕もそう思います。左派こそ力強く反緊縮を訴えていくべきで、そうすれば必ず勝てると思います。でも、問題はどうも日本では財務省的に「建設国債(道路などのインフラをつくる公共事業のために発行する国債)なら発行してもいいけれど、赤字国債(社会保障費など、インフラ建設等の公共事業以外に使うための国債)はダメ」みたいになっているということなんですね。
建設国債だったらいいっていう根拠もよくわからないんですけど、道路とか箱物は「国の資産をつくるからOKなんだ」という理屈らしいんですよ。そうは言っても、実際に道路を売り払えるのかといったら売り払えないんで、結局どっちでもおんなじじゃないかと思います。それなら建設国債で箱物をつくるんじゃなくて、赤字国債で福祉などの事業に投資したほうがよっぽどいいと思います。
【北田】民主党の「コンクリートから人へ」というのは、理念的にはそういう意味だったはずなんですけどね。だからあのキャッチフレーズをきちんと経済政策に落とし込んで実行すれば良かったんですよ。いまからでもまだ遅くない。