「面積」を使うと計算のカラクリがわかる
不思議に思うかもしれないが、この計算方法が成り立つカラクリは、面積で考えるとわかりやすい。そこで先ほどの「98×97」について、図を見ながら検証していこう。
「97」を「100」にするため、「98」から「3」を渡す目的は、計算しやすいように「3×97」の部分を移動して、一辺を「100」にしたからにほかならない。その結果、大きな長方形の面積は「100×95=9500」となる。それに右下に出っ張ってしまった長方形の面積「2×3=6」を足して、「9506」という正解を求めたのだ。
この計算方法を、実際に私は高校で教えている。というのは、生徒の多くが卒業後の就職を目指しており、その際にSPI(適性検査)などの試験を受けるのだが、こうした計算問題がよく出るからだ。「9」や「0」がたくさん並ぶので、筆算や展開公式のやり方だとケアレスミスが起きやすい。
そこでもっといい方法はないかと思案するなかで、自分なりに考え出した計算方法なのである。いわば「裏技」だ。言い換えれば、効率化である。
どんな問題でも粘って考えれば、効率的に問題を解くいい方法が見つかるものである。数学はそうした「自分で工夫していく醍醐味」を味わえる学問なのだ。生徒たちはそんな経験を積み重ねながら、実社会で何か問題に直面した際に、自ら問題解決できる力を養っていけるのだと思う。実は、そこに社会人も数学を学び直す意義があるのではないか。
日本お笑い数学協会会長
現役で高校の数学教師を務めながら、お笑い芸人として多くの人に数学の面白さを伝える数学教師芸人としても活躍。日本お笑い数学協会の著書『笑う数学』を1月に発刊。