住居費が重荷になった場合の難点は、にわかには削りにくいところ。住み替えて負担を減らそうにも、相応のコストや手間がかかる。事実上、支出の改善を試みたくてもできないわけだ。

そこで小林さんの場合、マンション購入時から重視されてきた「子供のために」という視点にメスを入れることにした。まずは自動車。これは2人の子供がまだ小さかったときには、たしかに必要な移動手段だった。だが最近では、子供たちはむしろ電車での移動を喜ぶようになり、利用機会が激減。なので、思い切って手放したのだ。すると住居費の一角を占めていた駐車場代2万2000円、保険代やガソリン代など維持費1万1000円の負担がなくなった。

流動費の中にも「子供のために」と支出が増えがちになっていた部分がある。娯楽費だ。これは「子供たちの柔軟な発想力を育みたい」と願う妻が、子供たちを動物園や水族館、各種博覧会などに連れていくためにかかっていた費用がほとんど。大がかりな水族館だと入場料もバカにならないし、付随して外食費もかさむ。代替案として、できるだけ入場料の安い公営の動物園などを利用し、外食費も減らすよう努めることにした。

そして、何より大きく変わったのが収入面。子供たちにだいぶ手がかからなくなったこともあり、子供たちが家にいない時間は妻がパートに出ることにしたのだ。はじめは、久しぶりに仕事をすることに不安があったようだが、いざ働き始めると、妻の表情は日に日に輝き始めた。家計が改善し、ジュニアNISAを始められるまでになったことにより、「子供のため」というモチベーションが新たにわいてきたためだ。

小林さんはいまや、年間100万円以上のペースで貯蓄を増やしている。今後は、子供の進学に伴う出費をどれだけ抑えて自分たちの老後にまわせるか――、それだけが懸念材料となりそうだ。

家計再生コンサルタント 横山光昭

マイエフピー代表取締役社長。「消費」「浪費」「投資」で仕分ける家計管理の考え方が大反響を呼び、庶民派ファイナンシャルプランナーとして、1万件以上の赤字家計を再生。著書に『年収200万円からの貯金生活宣言』シリーズ、『「貧乏老後」に泣く人、「安心老後」で笑う人』などベストセラー多数。
 
(構成=小澤啓司 撮影=小原孝博)
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