銀行口座凍結前にやっておきたいこと

通夜や葬儀、お墓への納骨などが終わり、少し落ち着いたら、次は各種解約や名義変更手続きだ。電気・ガス・水道などの名義変更、亡くなった人の携帯電話やネット、クレジットカードの解約、運転免許証やパスポートの返納など。このほかに生命保険の保険金請求、自動車保険や火災保険などの名義変更などもある。また忘れがちなのが、健康保険の「高額療養費」の申請だ。死亡前に病院などに入院すると、高額療養費の対象になり、1カ月に自己負担した医療費が一定額を超えると払い戻しを受けられる。時効は2年だ。

死亡後に必要な諸手続きは、リスト化して漏れがないかチェックしたい。とくに注意が必要なのが、金融機関への相続届提出のタイミングだ。

「銀行口座が凍結されると、葬儀費用など当面必要な現金を引き出せなくなったり、公共料金を引き落とせなくなったりします。相続届の提出は、各種名義変更が済んでから行うのが鉄則。亡くなったことが銀行に伝わると、届けを出さなくても口座が凍結されてしまうので、必要な現金は早めに引き出しておきましょう。法定相続人全員の合意があれば、150万円までは引き出しが可能です」

相続税支払期限は10カ月しかない

このように、家族の死後1カ月程度は葬儀法要、お世話になった人への挨拶回り、各種手続きに追われる。49日が過ぎると、少しずつ落ち着きを取り戻すようになり、この頃から相続に関する手続きを始めるのが一般的だ。

「相続税の申告は、相続が発生したことを知った日から10カ月以内です。ただし、相続関連の手続きには、その前に期限が来るものもあるので、全財産の内容と遺言書の有無を早い段階から確認しておきましょう」

遺言書がある場合は、原則的にその内容に沿って相続は行われる。だが、法律で認められた遺留分などもある。

「相続人は何人いるか」「どんな遺産がどれくらいあるのか」を把握しないと、相続税が発生するのかどうかもわからず、誰が何を受け継ぐのかといった遺産分割もままならない。土地や建物の評価額、預貯金など金融資産、負債の有無など、全財産の内容をできるだけ早い段階で把握しておこう。ただし、土地の評価額などは素人では判断できないこともある。迷ったら相続に詳しい税理士や不動産会社などに相談するのもひとつの手段だ。