認知症ケアの要点は「普通の暮らし」

国が在宅医療・介護を推進する一方で、「介護疲れ」を訴える人も少なくない。問題の大半に関わるのが認知症である。認知機能の程度で、在宅介護の難易度は大きく変わる。認知症が進行している場合には、介護者の負担を減らすためにも施設の利用を考えてみてほしい。

高齢者向けの施設や住宅には様々な種類がある。介護保険が利用できる施設のうち入居者の平均要介護度が最も高いのが「特別養護老人ホーム(特養)」である。入居一時金などの初期費用は必要なく、24時間の介護が受けられる。毎月の負担額は介護サービス費と食費などで月額9万~15万円程度だ。特養は全国に約7800カ所、約52万人が入居しているが、慢性的に不足していて地域によっては入居に数年がかかる。

このため軽度や中度の認知症の人は「認知症高齢者グループホーム」に入居するケースが増えている。入居一時金は無料から100万円程度で、月額15万~30万円程度の負担がかかるが、住まいは個室で、ほぼ9人のユニット単位で職員の介助を受けながら暮らす。大きめの家族のような雰囲気だ。日中の職員数は入居者3人に対して一人と手厚い。また毎年、外部団体による「第三者評価」が義務づけられており、認知症に特化した体制がある。全国に約1万2000カ所あるが、あまりの急増ぶりに開設を抑制している自治体も出てきている。

介護施設で最も費用が高額なのは「介護付き有料老人ホーム」だろう。高ければ数千万円という入居一時金と15万~40万円程度の月額費用が必要だが、認知症ケアという観点においては金額に見合うか疑問だ。一流ホテル並みのサービスが謳われていても、認知症ケアの理解度は施設によってまちまちだからだ。

認知症ケアで最も重要なのは、「普通の暮らし」への支援である。グループホームでは買い物や調理を入居者と一緒に行う事業所が多いが、有料老人ホームではこうした家事への参加は見られない。

福祉ジャーナリスト 浅川澄一
1948年生まれ。71年慶應義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。月刊誌「日経トレンディ」初代編集長、流通経済部長、マルチメディア局編成部長、編集委員などを歴任。2011年より公益社団法人・長寿社会文化協会(WAC)常務理事。
(星野貴彦(プレジデント編集部)=文)
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