税金だらけの車など誰も持ちたがらない


記録的な不振に喘ぐ新車販売台数。写真はトヨタ自動車・豊田章男社長。(PANA=写真)

持ちたがらないし、買いたがらない、こう思っている生活者が日本では急速に増えている。そうしたマーケットの変化、変質に対して、政府も日本の企業も反応が鈍すぎる。

象徴的なのが「自動車」である。国内販売は不振の一途だが、自動車産業は依然として日本最大の産業であり、斜陽化を食い止めるためにも車の購入を促進するような努力を官民一体となってすべきだろう。しかし現実は逆で、相変わらず車は税金の塊だ。

購入時の見積書を見ると、車両本体価格の下欄に、まるでペナルティが与えられたかのように税金がついてくる。消費税、自動車税、自動車取得税、自動車重量税と税金オンパレードだ。そこに税金同等の自動車保険が加わる。しかも、若い人ほど保険料が安くなるなら車を買う気にもなるだろうが、逆に若い人ほど保険料は高い。それでいてメーカーがつくるのはおよそセクシーとはいえない車ばかりなのだから、車を買えというほうが無理な話である。

駐車場がない人は高額な駐車場代も負担しなければならない。たとえば250万円で車を買った場合、10年乗ったら年間の減価償却は25万円だが、今挙げたような維持費を考慮すると、1キロも運転しないで年間60万円かかる。走れば走ったで、リッター当たり53円80銭のガソリン税に有料道路の通行料が別途かかるわけだ。経済的負担にウンザリして買ったばかりの車を売っても、日本の中古車は世界一減価償却が早いから安く買い叩かれる。買った瞬間に5年落ちとなるのだ。

さらに重荷になっているのが車検。新車の最初の車検は3年と多少は長くなったが、2回目以降は2年おきに車検費用が12万円かかる。アメリカやオーストラリアでは車検代など2~3ドルの世界である。

車の所有者はなぜこれだけ理不尽な経済的ハンディキャップを背負わされるのかといえば、車は「贅沢品」と見なされてきたからだ。狭い国土や道路事情を勘案して、「車という贅沢品」を買うのだから、課税し、その他の負担を強いてきたのだ。

今春4月の新車販売台数は対前年比47%ダウンという記録的な下落を記録した。もちろん震災の影響は大きい。しかし、生産力が回復しても、販売台数が劇的に回復することはないだろう。トヨタ自動車の若社長がいくら「若者に合った車をつくりたい」と力んでみても、そんな車ができるはずはない。若者が欲しがるとしたらただ一つ、使いたいときに目の前にパッと出てくる魔法のような車なのだから。