効果がありそうな健康法、健康食品

妻の快復を切望していた私は、少しでも効果がありそうな健康法や健康食品を見つけては、とにかく妻に勧めました。食事も玄米菜食をはじめ、がんに効果のある食べ物を中心に摂るよう、何かと口出ししたのです。

妻が乳がんになるまで、私は代替療法を胡散臭く思い、西洋医学だけを信用するようなタイプでした。ちょっと風邪をひいてもすぐに病院に行き、医者が出してくれる薬でないと安心しませんでした。

そんな私でも、しきりに妻に健康法や健康食品を勧め、妻が嫌がると、「本当に治す気があるのか?」と不満をもつようになったのです。妻が出社する前でも、健康法や健康食品の話を一方的にすることもあり、ちょっとした喧嘩になることさえありました。

いまから思うと、どれだけ妻に不要なストレスを与えていたことか……不摂生な生活を送っている私がいうことなんて、なんの説得力もありません。どれだけ反省しても足りないくらいです。

私が胡散臭い新興宗教にはまるかのように、健康法や健康食品を盲信するようになったのには理由がありました。病院に行くと、健康に関するフリーペーパーがたくさん置いてあるのですが、なかには、あたかも劇的に効くような健康法、健康食品が紹介されていたからです。冷静になって考えてみると、データに乏しい胡散臭い内容なのですが、堂々と病院に置いてあるので、あたかも病院が勧める健康法や健康食品のように思えてきて、知らず知らずのうちにしがみつきたくなってしまうのです。このようなフリーペーパーが病院に置かれていること自体、大問題だと思います。

西洋医学による医療と代替医療を合わせ、患者を治療する統合医学の権威、帯津良一先生は「虚しさを覚える過度な健康法では、本当の健康にはなれない」といっていますが、まったくそのとおりだと思います。ましてやがんが治るはずがありません。

健康法で怖いのは、ひとつ、ふたつと増やしていくことで、安心してしまうことです。お金のかからない健康法はもちろん、健康食品でも、お金の心配がなければ、簡単にどんどん増やしていけます。なかには健康食品や健康法を過信してしまい、医者の治療を信用しなくなる人もいるくらいです。

逆に、肉や乳製品など、摂りすぎると身体に悪いとされている食べ物を摂るのを控える「減らす健康法」は、好物なものほどつらく、極端に制限すると、食事の楽しみまで奪われてしまいます。

帯津先生は「健康オタクでは、免疫力が落ちてしまう。少々の不摂生をしても、ときめくことで免疫力や自然治癒力は高まる」といったようなことをいっています。このことを知ってからは、あまり健康法や健康食品を妻に勧めなくなりました。ただでさえつらい闘病生活を送っているのに、もうこれ以上、妻の負担を増やしてはならない、と反省したのです。

関連記事
末期がんから自力で生還した人たちが実践している9つのこと
がん宣告からわずか2週間。「死の恐怖」を振り切った妻
抗がん剤の効かない「がんの親玉」をたたけるかも
娘はまだ6歳、妻が乳がんになった
がんを克服するための感情マネジメント