民主党政権の崩壊は必然だった

【塩田】2009(平成21)年9月の政権交代は、小沢さんが懸命になって実現したわけですが、無残な形で終わりました。3年3ヵ月の民主党政権をどう総括していますか。

【小沢】政権交代が実現したことはとても良かったと思う。僕は年来の目的を達した。自民党政権を倒したというだけでなく、議会制民主主義を定着させる第一歩になった。だけど、民主党政権の崩壊は必然ですね。だって、約束したことをしないんだから。国民から見放されるのは当然です。ただ、僕はもう検察官僚の攻撃を受けて手足を縛られていましたから、それだけに個人的には非常に残念無念な思いです。

【塩田】野党側の最大の課題は、次の総選挙を目指して、「1強多弱」の与野党の状況をどうやって克服するかです。

【小沢】総選挙になれば、このままでは負けると大部分の人は思っているはずです。協力しなければ負けるに決まっている。これは子供でもわかる話です。一番の問題は、本気で「もう一度政権を」という意欲が今の野党各党にないということです。政権を狙わない政党はもはや政党ではない。政権を取って自分の考えを実行する。それこそが政党の存在意義なんです。

確かに各党にいろいろな思惑があって、現状では連携はなかなか難しい。だけど、別に合併しなくてもいいんです。選挙の際に連携する「オリーブの木」方式でいい。それに向けて、もう少し勇敢に踏み出して、候補者を一本化すれば、小選挙区で絶対に勝ちますよ。 

【塩田】最近の3回の総選挙は「大勝・惨敗型の選挙」でしたが、それは国民が自分の1票で政権を交代させることができるという自覚の表れだと思いますね。

【小沢】そうなんです。2009年の総選挙で日本国民が得た最大の果実だと思います。意識の転換です。民主党が期待外れだったから、また帳消しになったけど、次に野党側が一本になれば、またすぐに変わります。

【塩田】2009年の総選挙までは、小沢さんが全国を回って選挙に勝てるようにいろいろと工夫して頑張ってきました。あれをもう一回、というわけにはいきませんか。

【小沢】僕もお膳立てはするけど、誰かがやってくれるといいですね。あのときは民主党と自由党の合併で、一対一の選挙という態勢になった。それが最大の理由ですね。本質的な問題は、国民が自民党では矛盾を解決できない、代わったほうがいい、また自分たちの1票で政権を代えることができるという意識になったことでしょうね。これから一番大事なことは、強い人を立てることですよ。「強い」というのは有権者の信頼が大きい人という意味です。

【塩田】2009年は、自民党では駄目だと国民の側が見放したところありました。ここまでは堅調でしたが、安倍政権の自民党が国民から見放される可能性は。

【小沢】勝てないね、安倍政権では。きっと矛盾がもっともっと表面化していく。格差の問題、医療、年金など、いろいろなことがあるから。ただ、自民党の党内事情では倒れない。日本の経済、国際社会の事情が厳しくなる、それでも日本人がのほほんとしていられるかということですね。

【塩田】野党側は分立状態という壁を乗り越えることができますか。

【小沢】民主党でも維新の党でもいいけど、ある程度、規模を持ったところが旗振りになり、各党に呼びかけて選挙調整することだと思いますね。グループが4つも5つもあると、なかなか調整が難しいけれど、2つなら簡単ですよ。だから、われわれも含めて、このツーグループにそれぞれ参加すればいい。そこで候補者の調整を行えば、簡単です。