「もう一度、政権交代を実現する」

【塩田】もし総選挙で勝てば、そのときはどんな政権をつくるつもりですか。

【小沢】基本的には数の多いところが首相を出す。1993年の細川護煕内閣誕生のときは、与党を担うグループが多すぎたから、まとめるのに細川首相でとなった。この次は、せいぜい2つの大きいグループだとすれば、選挙で勝って、数の多いほうが首相を出すということでいいのでは。政党が一つなら、首相候補を示して総選挙を戦うことになるけど、選挙はそれぞれの党でやるから。細川政権をつくったときよりは整理された形になり、すっきりしますが、一つの党になるのは短期間では難しい。国会で統一会派をつくる話もありますが、それもそこに持っていくための一つの手段です。

【塩田】細川元首相や小泉元首相が進めている脱原発の運動をどう評価していますか。

【小沢】僕は直接、関係していないけど、いいことだと思いますよ。だけど、政治的パワーにはしないと言っているそうだけど、それだったら意味ないね。脱原発を実現するには政権を取らなければならない。政権とは関係ないと言うなら、それじゃあ、何をやっているの、という話になる。きれいごとでは駄目です。やるなら、腹を決めてやらなければ。細川さんは決めているだろうと僕は見ているけど、小泉氏は何を意図しているのか、腹はわからない。それでも脱原発と言っているのですから、それはそれでいいことです。

【塩田】政治家としての長い体験から、現代というのはどういう時代で、政治はどういう役割を果たさなければならないのかという点について、どんな見方をお持ちですか。

【小沢】世界中、カオスだね。特に日本は個々の国民の自我の確立、自立ができていない。政権交代ができるという意識がようやく出てきたけど、まだ民主主義が定着していない。その意味で、北東アジアは日・中・韓が非常に流動的で、基盤が弱い地域です。大動乱の前に、日本は国民自身が早くきちんと議会制民主主義を認識して行動できるようにならなければ、そのためにもう1回、政権交代を実現しなければ、と僕は思う。

【塩田】長い政治生活の中で、政治家として、国民のために何に一番、力を入れてやらなければいけないと考えてきましたか。

【小沢】生活です。仁徳天皇の考えです。民のかまどに煙が立たなければ。国民の生活を守れなければ、政治にならないでしょう。

【塩田】若い政治家を見ていて、リーダーシップとして何が欠けていると思いますか。

【小沢】具体的に言えば、政権を狙わない政党や政治家は辞めたほうがいい。これは国民に対する背信行為です。一番欠けているのは、自分の志、目的、理想に向かって行動する、努力する強い意志ではないですか。

【塩田】この先、政治家としてこれだけはやっておきたいというのは。

【小沢】もう一度、政権交代を実現する。そして、次の世代にたいまつを引き継ぐ。

【塩田】ありがとうございました。

小沢一郎(おざわ・いちろう)
生活の党代表・衆議院議員
1942(昭和17)年5月、岩手県奥州市生まれ(現在、72歳)。都立小石川高校、慶応義塾大学経済学部卒。69年の総選挙に27歳で旧岩手2区から自民党公認で出馬し、初当選。以後、連続15回当選(現在の選挙区は岩手4区)。自民党時代に衆議院議院運営委員長、自治相兼国家公安委員長、内閣官房副長官、幹事長を務め、離党後、新生党代表幹事、新進党の幹事長、党首、自由党党首、民主党の代表、幹事長、国民の生活が第一の代表などを歴任し、2013年1月から現職。時間ができたときにやりたいことは釣りと碁。「青い空、群青の海の中で釣り、いいですよ」「碁は、全体の形勢を判断し、最後まで細かいところにも神経を使って、気を抜かずにやる。それを外したら負ける」と語る。
(尾崎三朗=撮影)
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