実際にネットを通したクラウドファンディングで調達される資金の規模は年を追うごとに急拡大しており、図1のように13年には世界中で51億ドルに達した模様だ。そうした、ネット上で支援を募る者と支援を希望する人々との“仲介役”となるのがプラットフォームで、キックスターターやペイパルの場合、支援のお金と引き換えにモノやサービスをリターンすることを約束することから、「購入型」と呼ばれている(図2参照)。

図を拡大
図1 急拡大するクラウドファンディングの世界市場/図2 製品をつくる前に資金調達ができるクラウドファンディング

9月1日(日本時間)に米国のゲーム展示会「パックス・プライム」で稲船CEOが募集開始に合わせて発表したのが、暴走したロボットを撃破していくアクションゲーム「Mighty No.9」のプロジェクト。最も低い応募金額の5ドルの場合は完成したゲームのエンドロールへの名前の掲載、500ドルで稲船CEOのサインの入ったゲームのキャラクターのオリジナルスケッチの提供、最も高い1万ドルだと稲船CEOとのディナーを楽しむ権利などさまざまなリターンが用意された。

そして、「ファンと一緒にコンテンツをつくりたい」という“レジェンド稲船”の言葉に呼応するファンの輪が一気に広がり、1カ月間で世界各国の約7万人から合計404万6579ドルもの資金を調達できたのだ。その金額は、コンシューマーゲームソフトに関するものでは過去最高だという。

「15年春までにゲームをリリースする約束をしています。しかし、すでにつくる前からヒットしているわけです。実際にネットを通してゲームに対するいろいろなアイデアを出してもらえたことも画期的な出来事です。『Creator to Consumer』のまったく新しい『CtoC』の時代が到来したのだと見ています。クラウドファンディングの普及で、ゲーム業界は大きく様変わりしていくでしょう」

笑みを浮かべながら語る稲船CEOによると、日本の若手ゲームクリエーターのなかで追随する動きが出ているそうだ。クラウドファンディング関連事業の企画・コンサルティングを行うアーツ・マーケティング代表の山本純子さんも「実質的な事前予約販売のシステムを組むことができ、ベンチャー企業にとって堅実なビジネスを立ち上げやすくする有効な武器になっていくでしょう」と評価する。