井戸氏が想定する最悪のシナリオは「支給額3割減&支給開始68歳」。もしそうなったとき、われわれの家計はどうなるのか。
妻の就労内容別にシミュレーションした図を見てほしい。妻が正社員の場合、この設定では夫婦で受け取る年金の月額が約34万円から24万円へと激減する。大打撃だが、実は、「共働き世帯はまだ安泰」と井戸氏は言う。
深刻なのは、妻がパートや専業主婦の世帯だ。シミュレーションではモデル世帯の年収を高めに設定しているが、厚生労働省が試算する平均的な専業主婦世帯の年金受給額は現行制度で月額23万3000円。3割減なら約16万円となり、現役時代の生活水準を維持することは到底、不可能だ。
「専業主婦はしばしば“不良債権”などと揶揄されますが、今後はさらにその傾向が顕著となり、家計の足を引っ張る存在になってしまいかねません。妻がパート先で厚生年金に加入している場合は、いくらかましでしょう。しかし、もともとの給料が低いため、年金額はそれほど増えません」(井戸氏)
老後の自己防衛に「妻の活用」は欠かせない。可能なら、正社員として働いてもらおう。渋る妻には先のシミュレーションを見せ、圧力をかけるしかない。
一橋大学経済研究所世代間問題研究機構准教授。大蔵省(現財務省)入省後、財務総合政策研究所主任研究官などを経て2010年より現職。著書に『2020年、日本が破綻する日』など。
井戸美枝
社労士法人年金相談サービス代表。社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー、キャリアカウンセラー。著書に『世界一やさしい年金の本』など。