アニメにかかる大きなコスト

かつてのアニメではセル画を撮影したフィルムを現像しなくてはならない。そこに大きなコストが発生したのである。これは実写映画でも同じだ。フィルムを現像するには現像機がいる。長峯が卒業した日本大学芸術学部は地下に16ミリフィルムの現像施設があったのだが、その施設を作るだけで10億近い金がかかったといわれている。

素人がアニメであれ、実写であれ、映画を作るためにフィルム撮影をした場合、安価な8ミリフィルムでさえ、15分ぐらいの実写映画でも、フィルム代と現像代だけで30万はかかった。アニメを撮ろうとしたらさらに金がかかった。人を雇ってセル画を描き、撮影をプロに頼んだりしなくてはならない。実写よりもさらに多額の費用が必要なのがアニメだ。

ただし、それがデジタル化で劇的に変わった。

デジタル化の結果、やろうと思えば作家がひとりでパソコンと向かい合って、30分のアニメ作品を作ることができるようになった。中程度の性能のパソコンを20万円で買う。アニメ制作ソフトはネット上にフリーのそれがある。絵は自分で描かなくてはならないが、特殊効果や撮影はスマホでできる。編集は自分自身でやる。手間がかかるのは絵を描くことくらいだが、それはアニメ作家を目指すのであればやらなくてはならないことだ。

デジタル化でアニメは変わり、コストが下がったので、誰もが制作できるようになった。一方で、長峯がいるプロの世界では、アニメの精度が毎年、確実に向上してきている。

20分のアニメで3000枚の絵

彼は言う。

「これまで20分のアニメであれば3000枚とか3500枚の絵で制作していました。デジタル環境でも3000枚を描くのに延べ時間で言うと3カ月、延べ人数だと100人から200人。それが今や絵の枚数は1万枚を超えています。枚数が増えたのは絵を描き込んでいるのと、キャラクターの動きが精密になってきたからです。絵が精密になったのは見る人たちの要求でもあるし、アニメ会社同士の競争です。クオリティが高くないと勝てない。加えて、海外マーケットを考えると、クオリティを上げ続けないといけない。

アニメの市場は世界です。新しいアニメを作ると世界から「面白そうだな」とクリエイターが集まってくる。『ワンピース』を見て育った海外のクリエイターはオンラインで応募してきます。それで海外に住みながら日本のアニメの仕事をして有名になった人がいるんですよ。

今はニッチなアニメなら少人数で、しかも3カ月くらいで作れます。それを海外に出せば平気で1億から2億のお金になる。

なぜ、日本のアニメが世界で人気があるかといえば、それはエキセントリックな作品があるからでしょう。奇妙奇天烈で何が出てくるかわからないという面白さがあるのは今のところ、日本のアニメだけです」