アニメを通じて日本を好きになる

東映は知財ビジネスとライブ、アニメ関連で成長してきた。しかし、それは周到な考えと計画があったからではない。国内の映画マーケットが急激に減少したため、手当たり次第に新ビジネスを手がけて、ぐうぜん当たったからだ。

なかでも以前から海外進出に力を注いできたのがアニメだった。前出の清水慎治、東映アニメーション顧問は「長峯監督が言うように、ディズニーのアニメに飽きている層が海外には多い」と分析している。

清水は言った。

「かつてアメリカは他国のアニメ、特に日本のアニメを国内映画館で上映しなかった。ディズニーがアメリカのアニメだという自信、そして、東洋人に対する冷ややかな視線があった。また、日本のアニメってマンガから来ているでしょう。キャラクターを丁寧に描く。一方のディズニーはストーリーが決まっています。ストーリーはつねにハッピーエンドでなければならない。

ところが、日本アニメは主人公であっても途中で死んじゃうとか、悪いやつかと思えば実はヒーローだったとか、大人が見ても納得できるように作ってある。日本アニメは隙間産業から始まっているから何でも自由なんです。『ディズニーには飽きた』という層がアメリカにもいて、そういう人たちが『日本のアニメはいいなー』と支持するようになってきました」

テレビを見る子供
写真=iStock.com/fotostorm
※写真はイメージです

ディズニーは子ども向けの域を出ないが…

ディズニーのアニメはどこまでいっても子ども向けの域を出ないものだ。バイオレンスの表現もほぼない。悪役で出てきたら、物語が終わるまで悪役のままだ。物語に深みや奥行きがそれほどあるわけではない。ただ、キャラクター商品として売り出すのであれば、ミッキーマウス、ドナルドダックのように単純な性格にしておいた方が汎用性が高い。善と悪の両方を兼ねるような大人びたアニメの主人公だと、ぬいぐるみや人形は作りづらい。

それがアニメ業界、キャラクター業界の世界共通の考え方だったのが、1980年代後半からヨーロッパ、特にフランスで日本のアニメが受け入れられるようになり、世界のアニメ地図が変わっていった。

清水は変わる瞬間を見ていた。

「変化はフランスからだと思う。『キャプテン翼』『グレンダイザー』『キャプテンハーロック』といったものが出て、フランスやイタリアの少年たちが日本アニメとディズニーアニメは違うものだと認識したんです。日本アニメはディズニーのような真面目で心優しいキャラクターたちが出てくるだけのアニメではなく、サッカーやったり、ロボット同士が戦ったり……。少年たちはそういうものを面白がるんですよ。少女たちは『キャンディ キャンディ』『セーラームーン』を見てディズニーとは違う種類のアニメだと知った。そして、『ドラゴンボール』と『ワンピース』が日本アニメのファンを増やした。

他社だと『ポケモン』もそうです。全部、当たりました。そして、どれもこれもゲームになるんです」