アニメの制作手法はこう変わった
アニメ監督の長峯達也は東映アニメーションに所属している。『劇場版 Dr.SLUMP Dr.マシリト アバレちゃん』『ONE PIECE FILM Z』『ドラゴンボール超 ブロリー』といったヒット作を監督した。アニメの業界は年中無休だ。業界で働く人たちは忙しい。長峯もそんな超人たちが働く業界で長年、仕事をしてきた。日本大学芸術学部映画学科ではフィルムを使った撮影を体験している。実写映画とアニメに精通する監督である。
長峯が見てきたところ、アニメがいちばん変化したのはデジタルでの作画、彩色が始まった1990年代後半だ。東映アニメーションで言えば『ゲゲゲの鬼太郎(第4期)』の第64話(1997年4月)からだ。
デジタル作画、彩色とは、それまで紙と筆と絵具を使い多人数でやっていた作画、彩色をデジタル環境でやること。デジタルでやれば工数が減る。制作したものをデータにして送ることもできる。コストダウンが進み、大きな費用をかけなくてもアニメを製作することができるようになった。
長峯が東映アニメーションに入ったアナログ時代は途方もなく大勢の人たちが制作にかかわっていたのである。
当時、アニメはセル画を用いていた
当時、アニメはセル画を用いていた。セル画とは透明なシートのこと。セルロイドの略だが、実際は耐熱性のあるアセテートが使用されていた。背景画の上に、登場するキャラクター別に作成されたセル画を重ねて撮影する方法がセルアニメだ。セル画の組み合わせを変えればまた、別のシーンの撮影ができる。そして、セル画はキャラクター別だから多人数で分業して色を載せていた。
手間とコストがかかるのはセルに色を載せるところである。すべて人間がやっていたので、時間もかかったし、技術が必要だった。長峯が見ていると、ベテランの女性がペンを持ち、インクを付け、滑りやすくにじみやすいセルの上に器用に色を載せていた。絵の具を多く付けるとセルがふやけて使えなくなる。慎重な作業が必要なのである。
だが、ベテランの女性陣は躊躇なくペンを持ち、一発できれいに仕上げるのだった。
そういう具合だから、セルを仕上げるのは1日にひとりでせいぜい10枚といったところだった。
また、雨や霧のような自然現象をアニメにする場合、エアブラシを使ってインクを吹き付ける。噴き付けないところはマスクしておく。特殊効果を出すためにエアブラシを使用すると、1枚のセルを仕上げるのに20分はかかる。デジタル化以前の『ドラゴンボール』では、そうした特殊効果のために10人雇って、炎のような形の「オーラ」を制作した。10人はそれぞれポンプ付きエアブラシを持って、体育館くらいの広い部屋で長時間、インクを噴き付けるのだった。

