【leverage point】間仕切りを兼ねた本棚をすべて手づくり

自宅で仕事をするご夫妻のもう一つの希望は、それぞれの仕事部屋を確保することと膨大な蔵書の収納でした。そのための工夫が間仕切りを兼ねた本棚です。

「既存の壁を取り払い、代わりに箱を積み上げた壁を作りました。高さはすべて一間に揃えてあります。空間を広く感じさせることも一つですが、梁との間にできた隙間から、それまで暗かった家の奥まで光と風を通すことができました」

箱の壁はライフスタイルの変化に伴う間取りの変更にもフレキシブルに対応します。大量になった箱の製作は家具職人ではなく大工に依頼し、廉価なラワン合板を使うことでコストダウンを図りました。DIY感覚の軽やかな仕上がりが、家全体のナチュラル感にもマッチしています。

小上がりにした2つの和室はベッドとしても機能します。畳に寝る習慣はそのままに、寝起きに足腰の負担がかからないようにとの配慮からです。畳の下は収納スペースとして活用。大勢のゲストをもてなす機会が多いF邸では、リビングの小上がりは腰掛けとしても活躍します。

「便利な器具に頼りすぎず、シンプルな材料を使ってローテクに仕上げたほうがコストもかからず、長く愛用できると思います」

知恵と工夫で快適な住まいを実現したF邸は、2007年度「TOTOリモデルスタイル作品コンテスト」の全国最優秀賞に選ばれています。


 1/小上がりの和室の引き戸を開ければ、リビングと一体化した空間が広がる。窓回りをすっきり見せるため、カーテンの収納ボックスを壁際に設置。バルコニーにはデッキ材を敷き、リビングとの連続性を高めた。無垢のナラ材のフローリングに、家具作家ジョージ・ナカシマの名作の椅子が映える。

2/和室からリビングを眺めた風景。奥に見える本棚はリビングと奥様の仕事部屋を間仕切る壁の役割を果たしている。窓側に引き戸を設けることで、リビングから仕事部屋への動線もスムーズになった。

3/廊下の壁も蔵書の収納を兼ねた間仕切り本棚。梁との隙間から廊下に自然光がこぼれる。洗面室や玄関の壁、本棚、床など、使用した木材の色のトーンを揃えているので、家全体に統一感が感じられる。

4/食器洗い機や電気オーブンをビルトインしたシステムキッチンを採用、機能的になったキッチン。シンクの奥に開口部を設けることで通気も改善。

(撮影=淺川 敏 間取り図作成=長岡伸行)