「懐かしい写真」でなぜ、ストレスが解消されるのか
例えば、家の中に祖父母や孫、家族の肖像を飾っているとします。普段、まじまじとそれを眺めることはあまりないかもしれませんが、毎日、チラッと見るだけでも、ちょっとした安心感をもたらしてくれるものです。人間だけに備わったこの心の回路をストレス解消法として活用するとよいと思います。
私たちは朝起きてから夜眠るまで、目から絶えず視覚情報を入力しています。ほとんどの信号は何の情動も気分も発生させず、また記憶にも留められずに受け流されます。しかし一部の視覚情報は、特別に心に影響を与え、記憶に留まるのです。
でも、それが快の視覚信号の場合には安心感をもたらしますが、反対に不快な視覚信号の場合には「ストレス中枢」が刺激されて、心のモヤモヤが誘発されてしまいます。例えば、身の周りの生活環境の汚れ、ゴミの山など。だから人間は、汚い部屋や周囲を掃除するだけで心がスッキリとし、モヤモヤした気分にならないのです。
もし自分がうつのような状態であると感じたら、まず部屋の片づけをしましょう。でも部屋が綺麗になっただけではあまり改善が見られないかもしれません。目に止まるところに懐かしい写真を飾ってみましょう。そうすると、きっと心に火が灯り、明るい気分で生活できるはずです。
屋久島の自然音が「快」の情動を誘発する
聴覚を介した心地よい刺激も、心を癒してくれます。
現代の私たちの日常は、騒音と喧騒の中で暮らすことが当たり前のようになっています。車や電車の音、人の話し声など、ノイズが絶えず周りから侵入してきます。こうしたノイズは不快な聴覚性信号。「ストレス中枢」が刺激され、イライラを引き起こします。
反対に自然の中で暮らすと、鳥の鳴き声、川のせせらぎや水音、虫の音などが聴覚を刺激し、心地よさを感じるはずです。自然音は基本的に「快」の情動を誘発させるものです。これを応用したのが「サウンドヒーリング」です。
ヒーリングのためのサウンドとして、自然音CDを世間に広めている喜田圭一郎さんがいます。彼はある音楽会社でキャリアを積んだ後、20年前にサウンドヒーリング協会を設立しました。そして、「自然音に含まれた生命の響きを室内環境に流し、体に響かせることで心を癒す」という旗を掲げ、世界各地でヒーリングサウンドを広めています。彼は、私が大学で脳科学研究をしているときに訪ねて来られ、それ以来、コラボレーションをしています。喜田さんが屋久島で収録した自然音をCDで発売する際には、私は推薦記事も書きました。
私は約12年前に大学を定年退職し、東京都内にオフィス(セロトニン道場)を開設して、メンタルヘルスの面談指導を行っています。室内には屋久島の自然音が絶えず流れ続けているのですが、これだけ聴き続けても、まったく飽きがきません。
街中の喧騒が気にならなくなるだけでなく、心がホッとするのです。とても癒されています。自然音のすごさを私は日々実感して暮らしています。
都会の喧騒に疲れたら、自然の中にしばらく身を置いて過ごしてみるとよいと思います。たったそれだけで、心身ともに癒されていくはずです。

