クリエーティビティ重視社会の到来と6つの感性の磨き方を提唱、話題を呼んだ『ハイ・コンセプト』から5年。今回の作品のテーマは「やる気!」だ。個人が生き残るための心構えをアドバイスする。
ダニエル・ピンク Daniel H. Pink


1964年生まれ。エール大学ロースクールで法学博士号取得。世界各国の組織を対象に講義を行うかたわら、「 ワシントン・ポスト」などに寄稿。クリントン政権下ではゴア副大統領の首席スピーチライターを務めた。

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<strong>タイプIに必須の3要素</strong>:タイプIの行動は根本的に、3つの要素を拠り所にしている。自らの意思で行動を決める=自律性。意義あることの熟達を目指して、打ち込む=マスタリー。さらなる高みへの追求を、大きな目的へと結びつける=目的。3つが一緒になって「ダンスを踊る」とき、何かに没頭するフローの状態が生まれる。

タイプIに必須の3要素:タイプIの行動は根本的に、3つの要素を拠り所にしている。自らの意思で行動を決める=自律性。意義あることの熟達を目指して、打ち込む=マスタリー。さらなる高みへの追求を、大きな目的へと結びつける=目的。3つが一緒になって「ダンスを踊る」とき、何かに没頭するフローの状態が生まれる。

「マスタリー」「自律性」「目的」の3要素がうまく噛み合い“いっしょにダンスを踊る”とき、何かに没頭できる「フロー」の状態が生まれます。

仕事であれ、趣味であれ、「我を忘れて熱中する」というフローの感覚は、人間の魂にとって酸素のようなもの。フローを感じられないことは、私たちにとって耐え難い苦痛です。特に、仕事におけるフローは、人生の幸福と不可分といえるでしょう。

自分がどんなときにフローを感じるか。それを把握しておくことは、モチベーション維持にも役に立ちます。

やり方は簡単です。携帯電話のアラームを、1日に8回ほど不定期に鳴るようセットして、そのたびに、自分の精神状態を記録するのです。

人は、周囲を分析することには時間をかけますが、自分自身を分析するのは忘れがちになる。つい悪いほうへと考えてしまうネガティブ・スパイラルに陥らないためにも、ときには客観的に自分を見つめることも必要です。

あなたの存在によって“ポジティブ・ウイルス”がバラ撒かれ、「タイプI」の賛同者が増えることもありうる。ひょっとすると、仮面をかぶって「タイプX」のふりをしている“隠れタイプI”も、たくさんいるかもしれませんよ。

前著『ハイ・コンセプト』の原題は「まったく新しい思考/A Whole New Mind」であった。出版から5年を経て、社会は彼の“予言”した方向へと、ゆるやかにシフトしているように思える。

新しい思考が求められる創造性重視の社会で活躍するために、「デザイン、物語、全体の調和、共感、遊び心、生きがい」の6つの感性を磨くべきだという同書の主張について、改めて問うた。

プレジデント読者のための5つの心得
プレジデント読者のための5つの心得

6つの感性の重要性に変わりはありませんが、新たに「センス・オブ・タッチ(触感)」を付け加えることを検討しています。リサーチを通して、実際に相手や物に触れることの大切さに気づいたからです。

「ごめんなさい」とあやまるときも、言葉だけではなく、相手の手に自分の手を重ねて謝ったほうが、申し訳ないという感じがよく伝わるし、信頼も生まれやすい。こうした身体的な接触は、機械で代用することが難しいため、自分の武器になるのです。

もうひとつ忘れてはいけないのが、感性や感覚は、誰かに命令されて身につくものではないということ。「自律性」を高めなければ、クリエーティビティは生まれないのです。

繰り返しになりますが、仕事におけるフロー体験と人生の幸福を切り離して考えることはできません。人生の満足感、充実感の源は働くことにあるのです。

日本の読者のみなさんに、働く喜びを実感できる秘訣を伝授しましょう。

まず、仕事のなかに、心から楽しめることを見つけること。自分の強みを見つけて、それを活かすこと。日々の成長や進歩を確認すること。新しいことをはじめて、人間関係を広げること。そして「社会に貢献する」といった大きな志を抱くこと。この5つが、これからの時代のビジネスパーソンにとって、幸福の鍵となると思います。

(ノンフィクション作家 梶山寿子=インタビュー・文 相澤 正=撮影)