学んだことは「経営者の役目」
「今、思い出すと、大前経営塾やABSで学んだことのひとつは、経営者としての決断ということかもしれません。5年後、10年後から今を見るですとか、グローバルな環境との比較の中から自分の会社の戦略を考え出すということは、たぶん経営者でなければできないんです。『今、自分たちは何をやらなくちゃいけないのか。このままでいいのか』と考える。要するに自己否定するわけですから。大前経営塾やABSでは、いろんな経営者の話をビデオで見せてもらいました。今、経営者として判断をするときに『これはユニクロの柳井正さんのあの一言だ』とか『松井証券の社長さんの話だ』と、自分の脳みそに残っている感覚に気づきます。自己否定をして新しいことにトライするということは、従業員の視点からはできない、経営者の役目だと思います。それが大前経営塾やABSで学んだことなんだと思いますよ」
コールセンターが集めた顧客の声を、マインドマップ的レイアウトで「見える化」するというアイデアは、小野さんが考えたという。
「いろんなことをロジカルに整理する手法ですとか、それを相手に伝えるための手法というものも、大前経営塾やABSで学んだと思います。マーケティングの授業の中でプレゼン大会みたいなものがあったんですよ。十数回もプレゼン資料をつくりましたね。これは今、けっこう自分の財産になっていて、このあいだは県庁の人に、今、県でいちばん私がプレゼンが上手いと言われました(笑)」
小野さんは照れ笑いを見せるが、取材時に拝見したパワーポイントの絵面は、文字数が絞り込まれ、シンプルで説得力に富むものだった。最後に小野さんは、小野食品の将来像を語ってくれた。
「自分は将来、自分の会社を地域のモデルになるような会社にしたいと思うようになりました。日本のナンバーワンのレベルは無理ですけれども、少なくとも、若い人たちがここに来て力を発揮できるような会社になっていかないと、会社も地域も未来はないだろうと思うんですよ。そのためには自分たちがきちんとしたビジネスモデルを持って、自分たちの存在をしっかりつくり、そこで若い人たち、頑張っている人たちにきちっと給料を払って育てていけるような会社になっていくということがひとつの目標です。それが刺激になって、われわれの水産加工業界そのものに優秀な人間が集まってくるようにできれば」
冒頭で小野さんは、大前経営塾を受講したことで「ビビらなくなりました」と笑顔で語った。こちらは数週間後に、まったく同じことばを聞くことになる。BBT大学院一期生へのインタビューのときだった。
(次回は「大前門下生に聞く[2]——BBT大学院」 6月3日[月]更新予定)