都市部で暮らせばクルマは要らない
家賃は6万円。住まいは大阪市内で、JR大阪環状線の駅まで徒歩数分という便利なところにある。郊外に出ればより安い物件もあるはずだが、生活には自動車が欠かせなくなる。大阪市内で暮らせば、移動手段は電車と自転車で事足りる。
「文化的活動」にも妥協はみられない。まずは図書館だ。都市部の図書館では、本や雑誌だけでなく、映画や音楽も充実している。森川さんは「作家活動で収入を得ているので抵抗はある」と話すが、便利なものは使わないほうが損だろう。
大阪市内で暮らせば、フリーマーケットにも気軽に出かけられる。森川さんも50円のダウンコートや700円のエスプレッソマシーンなどを手に入れてきた。
「2000円を持っていけば、びっくりするほど買い物できる」という。
化粧品などは、懸賞で狙う。企業のメールマガジンを多数購読し、競争率の低そうな懸賞を探してアンケートに答え、ハガキを送る。多い月には1万円以上の高額商品が3つ当たったこともある。
「化粧品のサンプルは当選者の数が多いので、応募すればたいがい当たります。試供品の小さなものでも数が集まればそれで十分です。ヘアカットは理容専門学校の実習モニターに登録しているので、無料で切ってもらっています」
節約を重ねたご褒美は年1回の海外旅行だ。2005年のフランス旅行では15泊で飛行機代を含め約39万円を使った。アジア圏では20万円程度に抑えられるという。ただし、読者の一部からは「海外旅行をするぐらいなら貯金にまわすべきだ」という指摘も受けた。
他人の暮らしぶりを注意するとはお節介にすぎるが、懸念事項はゼロではない。ひとつは教育費。06年度の文部科学省の調査によると、公立でも、小学校で年間33万円、中学校で47万円、高校で52万円にのぼる。森川家にも小学校1年生の女の子がいる。だが、森川さんの回答はシンプルだ。
「高校までは行かせます。しかし大学は本人の意思次第。学資に不安があれば、アルバイトや奨学金という手もある。私自身は、大学へ行くことが重要だとは全く思っていません」
「老後」についてはどうだろう。年金はアテにならない。森川家でも貯金はしている。だが、「節約が染みついている」ので、家計簿はつけていない。
「執筆のために家計簿をつくりましたが、普段は大きな出費もないので必要ない。黒字があったときに少しずつ貯めています。夫が歯磨きに使うフロスの長さまで気になるのは、自分でもいきすぎだと思いますが……。貯金を残して死んじゃったら意味がないので、少しは有意義に使うことも考えたいと思っています」
森川さんは、「これまでの収入がいつまでも続くという前提が信じられない」として借金をしない。これまでの日本では、ローンで家や車を買う「出世払い」が普通だった。一方で、カネをかけずとも豊かに暮らす方法もある。危機の時代に強いのは、どちらだろうか。