根拠のない食事療法には害しかない

がんを治すことが証明された食事療法は、現時点では存在しません。しかし、インターネットや書籍には、がんを治すと称する食事についてのニセ情報があふれています。その背景の一つに、「がんの原因がきっとあるはずだ。毎日の食事がその原因に違いない」という思い込みがあると私は考えます。いわゆる「がんを消す食事」を扱ったインチキ健康書の多くにも、似たような主張が繰り返されています。

バランスのよい食事ががんのリスクを下げるのは事実ですが、どれほど努力して健康的な食生活を送っていても、がんになるときはなってしまいますし、ましてや、がんが食事だけで治ることはありません。根拠のない食事療法は、効果がないばかりか、栄養が偏ったり食事の楽しみを奪ったりする害が大きいのでおすすめできません。臨床医は、こうした誤解に対して敏感であるべきです。不適切な食事療法によって患者さんの生活の質が低下することのないよう、注意深く見守る姿勢が求められます。

私たちにできるのは、コントロールできる範囲のことを淡々と積み重ねること。できないことにこだわらず、起きた結果をそのまま受け止め、現実と折り合いをつけて生きていくことではないでしょうか。