スポンサー側にも問われる「見えない暴力」
フジテレビの報告書に記載されていた以外にも、こういった飲み会はテレビ業界で常態化しており、局側があの手この手を使って、スポンサーを満足させようとしていた姿勢がうかがえる。週刊文春が使うような「上納」という言葉との響きとは違うものの、むしろじわじわと精神を蝕んでくるようなタチの悪い飲み会である。いずれの例も、相手はタレントではなくスポンサー企業の社員であることに注目したい。つまり、一般男性だ。また、報告書には「スポンサーから肉体関係を求められた」という社員の声もあった。
そうなると出てくるのが、スポンサー側に責任はないのだろうか、という疑問である。今回は、相手が中居正広だったことで問題が強い関心を集めたが、他にも、可視化されていない範囲で、“見えない暴力”は多くあったのではないだろうか。いや、今回の報告書で適用されたWHO(世界保健機関)の定義で言えば「望まない性的な発言や誘い」も性暴力に入るので、これらもスポンサーによる性暴力と言っていいものだろう。
元NHKのアナウンサー・堀潤氏はX(旧Twitter)にて「社員が接待を強要された相手は芸能人だけではなく、ヒアリングの結果、広告代理店やスポンサー企業も含まれていました。該当する企業は沈黙せず自ら膿を出すべきでは?と思います」とポスト。スポンサー側の責任に言及している。堀氏の古巣であるNHKではスポンサー飲み会自体が起こりようがないので、より説得力がある言葉だ。
フジテレビ第三者委員会調査報告書。きょうのTOKYOMX「堀潤Live Junction」でも伝えた通り、社員が接待を強要された相手は芸能人だけではなく、ヒアリングの結果、広告代理店やスポンサー企業も含まれていました。該当する企業は沈黙せず自ら膿を出すべきでは?と思います。
— 堀 潤 JUN HORI (@8bit_HORIJUN) April 1, 2025
本当の意味で逆らえないのはスポンサーではないか
1月以降、スポンサーは、フジテレビへのCM出稿を取りやめるというかたちで、フジテレビの責任を追及するかのようなポーズを見せている。そうすることで「人権侵害は許さない」というメッセージを発信することができる。これは、ジャニーズ問題のときに、スポンサーが所属タレントとのCM出演契約を解除したときと似ているが、こうすることでインスタントに正義の側につくことができるのだ。
しかし、実際にこういった飲み会が行われていた以上、このフジテレビの悪しき構造、報告書が言うところの「セクハラを中心にハラスメントに寛容な企業体質」に加担し、この構造の“旨味”を吸っていたのは、中居正広もスポンサーも同じといっていいだろう。自分たちにも悪の要素があるにもかかわらず、一線を引いて正義ヅラをする態度には強い疑問が残る。
もちろん、本来は女性側を守るべきフジテレビが、自ら権力勾配がある男性と女性が出会う場を作り、女性が断れない状況を作り出したということは大きな問題である。だが、権力勾配という意味では、局側が本当の意味で逆らえないのは、スポンサーではないだろうか。