「全勝(ゼンショー)」男の企業姿勢がいま問われる
今回の異物混入問題では、「ワンオペ」の教訓がどこまで活かされたのか――という視点が問われる。人手不足のなかで、業務の効率化と衛生管理の両立は業界全体の課題だ。ゼンショーはその最前線にある企業であり、構造的な改善が求められている。
ゼンショーの社名は「善い商売」「禅の精神」「全店黒字化」を意味する「全勝」から来ている。小川氏はココスやビッグボーイなどのM&Aも成功させ、商品力とオペレーションを武器に再成長を実現した。
その背景には「飢餓と貧困をなくす」という企業理念がある。「食のチェーン化により、安価で良質な食事を届けること」が経営の根幹であり、小川氏の経営は思想と直結している。
「資本金はなかったが、志は世界一だった」と語る小川氏は、すき家を手始めに、ファミリーレストランのココスやビッグボーイ、回転寿司のはま寿司など次々と業態を拡大。2000年代には年数百店を出店する成長企業にのし上げた。
多ブランド、多業態の経営を支えてきたのが、小川氏独自の「サッカー型経営」だ。従来の縦割り構造ではなく、ポジションに縛られず柔軟に攻守を切り替える――サッカーのように流動的な組織運営を目指した。さらに現場では、厨房や接客の動線を徹底的に見直す「動作経済の原則」を導入。人の動きの無駄を極限まで削ることで、省力化とサービス品質の両立を追求してきた。
近年は国民生活産業・消費者団体連合会(生団連)会長として教育や国家観にも言及するなど、経営者とは違った顔も持つ。
全国一斉休業はどう評価されているか?
今回の全国一斉休業には、驚きとともに一定の評価も寄せられている。「一度信用を失ったら終わり」「対応が早くて誠実」といった声もSNSで多く見られ、現場の従業員からも「リセットの機会にしたい」との前向きなコメントがある。
消費者は、問題が発覚すること自体よりも、その後の企業姿勢を見ている。「隠すより、見せる」「逃げずに正す」――このゼンショーの対応は、他企業の危機管理にも一石を投じたといえる。
一連の騒動を経て、「すき家」の客足が戻るかどうか。その答えは現場の厨房とカウンターにある。再発防止策や教育体制の整備、透明性のある情報発信――これらがどこまで徹底されるか。日々の一杯の積み重ねこそが、信頼の再構築につながる。創業以来、数々の逆境を糧にしてきた“外食王”は今、新たな壁に向き合っている。

