一斉休業で24億円の損害が

この判断による売上減は約24億円にのぼると見られるが、小川氏は「損失より信頼回復が最優先」と語った。すべての店舗で清掃・消毒・点検を行い、マニュアルの再確認、設備点検を徹底するとしている。

小川氏は石川県出身。都立新宿高校から東京大学に進学するも、全共闘運動にのめり込み中退。その後は港湾労働者として汗を流し、労働運動に身を投じた。外食業界に足を踏み入れたのは、1978年に吉野家に入社してからだ。

再建中の吉野家で現場から経営を学び取る一方、吉野家が経営悪化する中、再建を主導するメンバーの方向性と自身の理想にギャップを感じて退社。1982年にゼンショーを創業する。当初の資本金はわずか500万円。横浜・生麦の倉庫にベニヤと角材で「本部」を設け、弁当販売からスタートした。

牛丼業態「すき家」を立ち上げたのはその後。小川氏は当時「牛丼は駅前の男性向け」という常識を打ち破り、「日本のハンバーガー」として牛丼の可能性を再定義。テーブル席の導入やファミリー対応で、郊外型牛丼チェーンという新たな市場を切り開いた。

吉野家出身、小川賢太郎という男

ゼンショーHDは2024年3月期(連結)に売上高9657億円(前期比23.8%増)、営業利益は537億円(同147.1%増)と過去最高を更新。25年3月期は売上高が国内外食企業としては初となる1兆円を達成した模様だ。主力の外食事業では「すき家」「なか卯」「ココス」「はま寿司」など20超のブランドを持つ。特にすき家は国内外に拡大し、国内牛丼業界で最大店舗数を誇る。海外進出も積極的で、アジアや中南米、欧州にも「SUKIYA」ブランドを展開する。

小川氏のビジネス人生には幾度も試練があった。2004年にはBSE問題で牛丼の販売を中止し、豚丼とんどんなど新メニューでしのいだ。2010年代には「ワンオペ勤務」による過酷な労働環境が批判を浴び、「ブラック企業」と名指しされた過去もある。