「石破おろし」に菅元首相の姿が見えない理由
もう一点注目すべきは、なぜ菅義偉元首相がそこに加わっていないのか、菅氏の姿がそこに見えないのか、という点である。
やはり、もともとの三派連合という構図において菅氏は非主流派ではあるものの、ポスト石破を考えていく上で、菅氏の存在は必要であると私は考える。やはり、その菅氏が首を縦に振らない限り、なかなか動きが取れないというのが自民党の現実である。
仮に三派連合が石破潰しを仕掛けるにしても、一体誰が石破氏に対して直接行動を起こすのか、ということになれば、それはやはり岸田氏、菅氏をおいて他にないだろう。
そういった意味で興味深いのは、小泉進次郎氏の動きである。
いわゆる10万円の商品券問題で一気に求心力を失っていった石破氏に対して、「国民に疑念を抱かせ、1期生を困惑させた。首相はしっかり受け止め、説明を尽くす必要がある」と容赦なく追い込んだ。
小泉進次郎氏といえば、菅氏の側近中の側近として知られる存在である。選挙区も同じ神奈川県ということで関係が深い。
菅氏が首を縦に振らない限り、石破氏に対して決定的な行動をとることはかなわないとするならば、そこをどう巻き込んでいくかが鍵となる。ところが、茂木氏の菅氏に対するアプローチ、あるいは岸田氏、麻生氏の菅氏に対するアプローチというものが、まったく見えてこないのである。
政局の鍵を握るのは菅元首相
さて、これを少し調べてみると、菅氏もどうやら通常の政治活動が行えるような健康状態にはないようである。そして、次の衆議院選挙の公認候補もすでに決定している。菅政権時に首相秘書官を務めた人物が、後任候補として立つことが決まったということである。この点を踏まえると、自民党としても菅元首相は政治の第一線から退いていて、石破おろしに関しても蚊帳の外に置かれているのではないかと推察される。
ただし、全面的に引退しているわけではないため、菅氏の意向をいかに確認し、その動きをどのように見極めていくかという点が、今後の大きなポイントとなってくるであろう。その影響力の程度については明確ではないが、間違いなく小泉進次郎氏の動きの背後には、菅氏の影響が感じられる。
とするならば、最終局面において菅氏がどのような動きを見せるのかは、十分に見極めていかねばならない。すでに事実上の政界引退に追い込まれた存在であるとしても、完全に無視してよい存在ではない。
最後に菅氏が何らかの仕掛けを行ってくる可能性は否定できず、ここは注視しておかねばならない。それが現実に起きた場合、元首相という立場にある人物だけに、赤子の手をひねるような形で物事を進められてしまう恐れがある。ゆえに、今後のその動向について、継続的に注視していきたいと考えている。