ポスト石破に意欲を見せる茂木氏
この会食をセッティングしたのは、茂木前幹事長である。
茂木氏については複数の議員から「アメリカのトランプ大統領のような交渉力が求められる相手と渡り合うには、自分のようなタフネゴシエーターが必要だ」と周囲に語っていると聞いている。つまり、茂木氏は首相就任への意欲を隠しておらず、非常に強い意気込みを見せている。
さらに言えば、3月13日に突如浮上した石破首相の10万円商品券問題をリークしたのは、茂木氏だという情報がまことしやかにささやかれている。私の元にも、自民党内部の関係者から「茂木氏が流したらしい」という話が入ってきており、さらに野党側、特に調査能力において高い評価を受けているある野党の有力議員からも、「茂木氏が情報源ではないか」との話が届いた。茂木氏本人が認めない限り、裏付けを取ることは極めて難しいが、このような言説が少なくとも永田町界隈で流布されていることは事実である。
その茂木氏が会談の場を手配し、そこに岸田氏、麻生氏が応じたという形だ。
「三派連合」関係修復ならず
この三人衆とは一体何者かというと、かつて岸田政権を支えた三派連合である。つまり、岸田政権の権力基盤とは、岸田派、麻生派、茂木派。この三つの派閥が手を組むことによって岸田氏を支え、そして多数派を形成することにより、党内を制圧していた。
しかし、岸田政権の末期に茂木氏が総理総裁のポストに意欲を示し、一旦その関係は解消された。加えて、昨年の総裁選において、特に決選投票において石破氏を全面的に支援した岸田氏と、高市早苗氏を全面支援した麻生氏、この二人が決選投票で争い、その際に生じたしこりが残っているという状況だ。
会談はその関係修復のために行われた。何のために修復を図るのかと言えば、やはりポスト石破に向けて一致団結し、この三人が手を貸し、すなわち党内の指導権を握っていこうではないかという意志のもとに、茂木氏が主導したということになっているのである。
ただ、そうは言っても、結果的にこの会食はうまくいっていない。再び結束が確認されたのかと言えば、まったく確認されていない。もしこれが結束確認のための会食であったとするならば、これは失敗に終わったというのが私の受け止め方である。
岸田氏の茂木氏に対するわだかまりは消えていなかったし、麻生氏と岸田氏との間のしこりも解消されることはなかった。そして結果的に、茂木氏はポスト石破に向けて手を挙げ、自分に協力してほしいという要請を行ったにもかかわらず、色よい返事を得ることはできなかった。茂木氏の思惑は外れてしまった、というのがこの会食の結果であったということである。