番付好きの江戸には「おかず番付」があった

【飯野】こちらをご覧ください。江戸時代の人気の倹約おかずを相撲や歌舞伎の番付風にランキングした、通称「おかず番付」です。

東側「精進方」は植物性食品、西側「魚類方」は魚介類のおかずです。この時代の最上位だった大関を筆頭に、関脇、小結、前頭と順位をつけて見立ててあります。

「雑」と付いているものはオールシーズン食べられ、「春」「夏」などと書かれているものは季節の味を表しています。

壁に貼られた『日々倹約料理仕方角力番附』を見るお二人
『日々倹約料理仕方角力番附』から四季を通じて多彩な酒の肴を味わっていたことがうかがえる。中央には、欠かせない漬物や調味料が記される。[出所=『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』(プレジデント社)]

【久住】なるほど。精進方のトップが八はいどうふというわけですね。次が昆布油揚げ、続いてきんぴらごぼうですね。親近感を感じるな(笑)。

【飯野】この『日々倹約料理仕方角力番附』は、庶民が日常食として利用しやすいものが中心となっているといわれていて、約200品のおかずが記されています。

『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』(プレジデント社)
『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』(プレジデント社)

【久住】いろいろ食べていたのですねぇ。豊かだなぁ。日本には四季があるということをあらためて感じます。魚類のほうは、大関が鰯のめざしに、あさりのむき身の切り干し大根。まぐろも入っている。今と変わらないじゃないですか(笑)。

【飯野】おかずとして好んで食べていたものではありますが、同時に酒の肴になるものが多数含まれています。

【久住】僕はグルメ漫画の原作を書いていますが、外国にこんな漫画はありません。でも日本ではほかにも多数のグルメ漫画があって、毎月のように雑誌や本が発売されている。海外から見たらどうかしてる民族かも(笑)。

僕が思うに、おかず番付は江戸時代版“孤独のグルメ”だと思うんです。酒を呑みながら「これが大関だろう」とか「なくちゃならない漬物はこれだろう」とかをあれこれ考えている。それを現代人の僕が見て、いいねと思ったり、食べて今もこれが一番うまいと賛同したり。自分の舌で江戸の人と繋がれた喜びがあります。

(文=江戸呑み連中 料理=海原 大「江戸前 芝浜」主人 撮影=大沼ショージ)