江戸の家飲みはテイクアウトも充実
【飯野】江戸の家飲みではテイクアウトも盛んに利用されています。屋台とは別に、「菜屋」と呼ばれる魚介や野菜を煮付けた煮染を売る店があって、生あわびやするめ、焼き豆腐、こんにゃく、くわい、れんこん、ごぼうなどをかつお節の出汁と酒、醤油で煮染めたものを売っていました。さらに、町のあちこちに「刺身屋」もありました。
【久住】魚屋とはまた別の小売店ですか?
【飯野】魚をおろしてきれいに盛り付けてくれます。ツマも大根、うど、生海苔、防風、赤芽(紅蓼)など2、3種類は常備しています。『守貞謾稿』には、かつおとまぐろの刺身をおもにしていたとありますが、ただその他のものも、適当なものがその日に揚がれば販売します。「今世、江戸にありて京坂にこれなき生業」として紹介されています。
それほど江戸っ子は刺身を食べるのが好きだったんですね。
【久住】いま僕の目の前にある火取りかつおも刺身屋で売っていたものの一つですね。皮に塩を振って炙ってありますね。このままでも十分に塩気があって、う~ん、おいしい。辛子醤油もいいし、先ほどの鯵のように酢を付けて食べてみてもまた美味です。
【飯野】わからないのは、刺身屋にお皿がたくさん用意してあったのか、お客がお皿を持参して盛り付けてもらったのか。そこまでは書いてないですが、どうも僕は後者のような気がします。
【久住】後者のほうが返す手間がないですものね。こんな酒菜が店よりも安く、自宅で手っ取り早く食べられるなんて。せっかちな江戸っ子の気質にも合っていたのかもしれません。

