ダイムラーとの破談

四半世紀以上も前の話だから、覚えていない人も多いだろう。1999年の春、日産が資本提携の本命としていたのはルノーではなく、独ダイムラー・クライスラー(現メルセデス・ベンツグループ、以下ダイムラー)だった。

当時、ダイムラーのCEO(最高経営責任者)は「ニュートロン・ユルゲン」と呼ばれたユルゲン・シュレンプ氏だった。米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチCEOが「世界シェア1位以外の事業はいらない」と大リストラを敢行し、「ニュートロン・ジャック」と呼ばれたことになぞらえた異名である。

不採算事業を叩き切る一方で、シュレンプ氏は本業の自動車事業に資本を集中投下した。その象徴が、当時のダイムラー・ベンツが1998年に実現した米クライスラーとの合併だ(これによりダイムラー・クライスラーが誕生)。「ビッグ・スリー」と呼ばれた米三大自動車メーカーの一角であるクライスラーとの合併により、高級車のベンツを作る中規模メーカーだったダイムラーは年間の販売台数を合併前の100万台から400万台に乗せ、世界5位に浮上した。

(大西 康之/文藝春秋 2025年4月号)
オリジナルサイトで読む